風丸は先天的な女の子
すごく少女漫画


痛むお腹をきゅうっと押さえる。勿論そんなことで痛みが弱まる筈もなく、つきつきと痛むそれは段々と酷さを増していく。
ズキズキずきずきぐるぐるズキズキ。
「いた…」
思わずベッドに雪崩れ込む。
月の内の数日、特定の時期にやって来る女子特有のこの痛みが嫌いだった。しかも自分は人よりも重いらしく、酷いときには体育はおろか、学校自体休まなければならなかった。いつもなら身体を暖めてくれる温かなお茶すら、今の自分には痛みの種でしかない。
この時期が来ると、こういうことの無い男子が羨ましくなる。いや、男子は男子で、何か特有の悩みはあるのだろうが。もしも自分が男であれば、今頃元気に走り回っていたのに。サッカーだって思うように出来たはずなのに。自分ではどうしようもないとわかっているものの、そう思わずにはいられない。
ああ、本当に酷くなってきた。気をまぎらわそうと、何となくアドレス帳を開く。決して今家には独りで、だから人恋しいなんてことじゃない。本当にただ何となくだ。ふと、特定の人物の名前で手を止めた。
「豪炎寺、」
それは、付き合ってもう3ヶ月になる彼氏の名前だ。幼馴染みの円堂と同じサッカー部のエースストライカー。今は世界の強豪相手に戦っている筈だ。優しく、暖かく、まるで日溜まりの様に自分を包み込んでくれる彼。いつもなら余計なお世話だと言いたくなるそれが、暫く会えていないことも相まって、凄く会いたくてたまらない。声だけでもと思い、電話を掛ける。
1コール、2コール…
『もしもし?』
「久し振り、豪炎寺」
『珍しいな、お前から掛けてくるなんて。何かあったのか?』
「ううん。ただ声が聴きたかっただけだから」
本当にそれだけ。ただそれだけのことで安心しきっている自分がいた。
「でも、声聴けたから。本当に用事とかある訳じゃないし」
『…風丸』
「なに、豪炎寺」
『無理はするなよ』
「それ、私のセリフ…」
やっぱり豪炎寺は優しい。でもそういうことは私に言わせて欲しい。一応彼女ってことになっているんだから。
「FFI頑張れよ」
『ああ』
「応援してるから」
『ああ』
「負けたりしたら承知しないからな」
『負けるつもりはないさ』
ふふ、と互いに笑う。
「それじゃ、また」
『ああ』
ぷつり、つー…つー…
たった数分の、短いやりとり。けれど自分には充分な時間だった。
いつの間にか、腹痛は消えていた。





(不器用な私たちの恋愛表現)
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