「ん…?」

日直の仕事の一つである黒板を消す作業をしようと黒板に向かったが、何故か黒板消しが見当たらない。
何処にあるのかと見渡してみるが、後ろの黒板にも無いようだ。


「どうしたんだ鬼道」
「いや、黒板消しが見当たらないんだ」
「ああ、それなら…」

チラリと一方向へと目を向けるクラスメイトの目線を追ってみると、そこには

「何をやっているんだ」

半開きの扉の間に挟まる黒板消し。昔からある簡単なトラップ。というか今時そんなことするやつがいたのか。
取り敢えず黒板消しが無ければ作業することができない。これを仕掛けたやつには悪いが、早急に取らせてもらう。

「あー!鬼道ダメだってば!」

…うちのキャプテンは何をしているんだ。

「俺は黒板を消したいんだが」
「ダメだって先生の頭に綺麗に落ちるのか賭けてんだから」

ハッキリ言って俺には関係のないことだし、それにこう言ってはなんだがくだらなすぎる。

「もし本当に先生に落ちたらどうするんだ」
「え、うーん」

考えていないのか。例えいつもニコニコした優しい先生だとしても、そんなことをされたら絶対に怒るだろうに。
「とにかく一回使わせてもらう」
「それもっかい仕掛けんの大変なんだぞ!後でで良いじゃんそんな」

バスッ!

「「ばすっ?」」

音のした方へ、二人顔を向ける。そこにいたのは、

「ご…豪炎寺」

頭を粉まみれにした豪炎寺。赤や青などの色が沢山混ざり綺麗なグラデーションを醸し出している。
普段クールな豪炎寺がそれを被っている様はシュールとしか言いようがない。

「うわわわごめん豪炎寺!まさか豪炎寺が引っ掛かるなんて思わなくて」
「つまりお前が仕掛けたのか」

豪炎寺の醸し出す空気は尋常でないほど冷え込んでいた。

「いいいいいいや、ほら俺以外にも一緒になってやってたし確かに仕掛けたのは俺だけどちょっと待って豪炎寺それはまずいからそれファイアートルネードのかまえだろしかもそれボールじゃなくて花瓶だしそれはほんとにダメだってばぁぁぁぁぁ!!!」


取り敢えず自分の責務を果たすべく、床に転がった黒板消しを拾い上げる。
…ああ、帝国が恋しい。





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