「優しくされると怖いんです」
そう言った宮坂の頬を、一筋の涙が伝う。
真珠の涙なんてよく言うけれど、本当に真珠のようだった。
ポロポロといくつもの涙が伝っていく。しまいには、洪水のように止めどなく溢れ出る。
その様子を俺は、ただぼうっと見下ろす。昨日ちゃんの寝た筈なのに、頭が働いていないみたいだ。
尚も溢れるそれを、宮坂も俺も止めようとせずただただ流し続ける。
「貴方の優しさは誰に対してもあるものだから、俺だけの特別が欲しいんです、
風丸さんにとっての特別になりたいんです。…あの人の様に」
ただただ流し続けるそれを止める術を、俺はまだ知らないから。
何とはなしに綺麗すぎる黄金の髪を掬い上げれば、途端に弾かれる右手。
じんじんとした痛みが手の甲にじわりと広がっていく。
まだ頭は眠っているかのようにうっすらと霧が広がる。
「貴方は今、いったい何処にあるのですか?」
そうっと抱き締める。
今度は素直にその行為を受け入れる。
「ねえ、何処にあるのですか貴方は。此処には貴方の心はないのでしょう?」
此処にいる俺は唯の脱け殻。心はアイツの所に置き去りにされたまま。
そのことは宮坂もわかっているのだろうけれど。
「俺には貴方しか居ないんです。だから貴方の身体も心も何もかも欲しいんです。でも貴方は俺じゃダメなんですよね」
いつの間にやら涙は止まっていたみたいだ。
わかっているなら聞かないでくれよ。
これ以上俺を悩ませないでくれよ。
…もしアイツなら、どうすればいいのかわかるのだろうか。
でももしなんて無いから、俺はアイツじゃなくて。だから何も出来ない。
目の前の顔すら見たくなくてぎゅうっときつく目を閉じれば、自分の頬に暖かな雫が零れ落ちた気がした。
友人に捧げた文を少しだけ修正