「風丸って、案外でかいよな」
突然、そんなことを言われた。
言った張本人であるマックスは、手を俺とマックスの上でヒラヒラさせている。
「マックスが小さいんじゃないのか?」
そうからかえば、しつれいだなーなんてけらけら笑う。
そうしていると、いつの間にやら、半田が近くに立っていた。
「確かに風丸、微妙に俺より大きい」
なんで落ち込むんだ半田。
「そう言えば風丸、この前の身体測定で、意外にも部内で真ん中くらいだったよな」
「なんだよ、意外って」
これはからかわれてるのか?
「円堂は意外と小さいんだよな」
「壁山とか染岡とか省いたら、一番大きいんじゃないかな」
確かにあいつらは規格外と言うか、俺たちとは頭1つ分は違うのだから、比べるまでもない。
「やっぱ牛乳か?」
「俺給食以外では飲まないぞ。てか、そんなの染岡とか影野あたりに聞けよ。俺らそんな変わらないし」
「それでも小さいのはいやだろ」
「そう言えば、半田は何しに来たのさ」
いきなり話題を変えるなマックス。けど確かにそうだ。
「あー…と、どっちか理科の資料集もってないか?今日使うの忘れてて」
「あ、俺持ってるぞ」
「おっサンキュー」
「どうでもいいけど、あと1分でチャイムなる…」
キーンコーンカーンコーン……
「あ」
「教えるの遅かったねドンマイ。もしかしてもっと早く教えてほしかったり?」
「当たり前だろ!くそー、覚えてろよマックス!」
そんなどこぞの悪党みたいな捨て台詞を吐いて、教室とは反対の階段の方へ走っていた。移動教室だったのか、ご愁傷様。しかも半田のクラスを担当してる先生って、時間に厳しい人だった筈だ。
だからあんな台詞かと1人納得する。
頑張れ半端ー、なんて呑気に手を振ってるマックスは絶対にSだと思う。
「ポニーテールかな?」
「何が?」
「ポニーテールの分高く見えるのかな」
「ああ、背の話。つかまだ続いてたのかそれ」
「だって悔しいじゃない、男として小さいのって」
まあそうだろうけど、だからってポニーテールは違うだろ。多分。
「ま、いいけどねー」
高校までには追い越すから。
そうニッコリと告げ、自分の席に戻っていく。
そんなマックスの後ろ姿を見ながら、とりあえず毎日牛乳を飲もう。