「この本読んだことありますか」そう言って彼女が差し出してきたのは一見何の変哲もない、手のひらサイズの文庫本。手にとってタイトルを見てみると、怖すぎると評判で今売れに売れまくって映画化までされているホラー作品だった。
「そんなに怖いのか」「正直そこまでとは思ってなかったんですけど」すごく怖いです、と言って彼女は小さく震えた。
「是非静雄さんにも読んでもらいたくて」「…………」何でそこで俺に読んで欲しがるのか全くわからなかったが、結局好奇心に駆られた結果俺はその文庫本を開いて読み始めてしまったのだった。


話自体は短いものだったのであっという間に読み終わった。ぱたんと本を閉じるとすぐさま彼女に手渡した。
「確かに怖いな」正直にいえば凄まじく怖かった。こくこくと彼女が頷いて同意する。
「…友達がその映画のチケットをくれたんですけど…怖くて…でも行かないとチケットがもったいない気もして…」どうしたらいいんでしょう。そう言って彼女は困ったように目を伏せる。恐らく友人に貰った手前、売るという選択肢はないのだろう。映画、映画なあ。確か幽が出ると言っていたような気がしなくもない。
「俺がついてってやろうか」
そう言うと、彼女の顔がぼっと真っ赤に染まった。「い、いいんですか?嫌なら別に、むむ、無理しなくても」「いや、俺もひとりは怖いし、丁度いい」
そう、別にそれ以外何もないただそれだけのこと。多分。



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