血の匂いがするのだ。蟲ではない。あいつはこの街に来ていないようだ。鉄が錆びたような苦くて甘い匂いがする。目の前を歩く女子高生から。咄嗟に呼び止めると全く面識のない眼鏡の少女だった。あの何か用でしょうか。彼女が驚いた様子で聞いてくる。あー、あのな、と口を開くも言葉が続かない。くせぇ。などと間違っても口にできない。しかも女子高生相手に言える筈がない。あ、あーあのな、お前どっか、怪我とかしてねえか。どうしてですか。え、いやなんか錆臭いっつーか血の匂いが。怪我なんてどこも、と少女は言いかけてはっと何かに気付いた様子で、忘れてましたそうですすみませんありがとうございます、と言って引き止める間もなくその場から立ち去った。悪い事聞いちまったかなもしかして生理だったのかなと思うもすでに遅かった。しかし血の匂いは次の日も、その次の日も、一週間後も一ヶ月後もずっとし続けた。少女が近くにいる時ほど強く甘く香った。俺の前世は犬だったのかなと静雄は考え始めた。血の匂いはあの夜が明けてからずっと続いた。


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