2604(65) | ナノ

食欲の秋、スポーツの秋、読書の秋。秋といえば色んなものが美味しくて、学食も豪華になる。いや、学食が豪華じゃない時なんて無いんだけど、夏から秋に変わったらデザートだって変わるからさ。新鮮なんだよいつも。三年間食べてるけど、同じものが出ないってすごいよね。いつだって目新しい。あーでもすっごく人気あったりすると次の年もあるけど。うん、全部変えちゃわなくても良いと俺は思う。だってすっごく美味しかったらまた次の年も食べたいじゃんね。ということで今日は三年間ずっとあるモンブランにしてみました。名前の由来は『山』なんだって。最高級の日本のどっかの栗を使った良く分かんないけどすごく高級なんだって。お金出して買う訳じゃないから分かんない。まず相場が分からない。あ、今日は跡部が奢ってくれました。昨日は宍戸だったなぁ。いつか覚えてないけど、鳳に奢ってもらった時は新作の巨峰を使った美味しいスイーツだった。

「…美味いか?」
「うんっ、幸せ〜〜〜♪」

あとべありがとーって口で言ったつもりだったけど、口の中モンブランでいっぱいでもごもごになってきっと跡部には届いてないんだろうなぁ。その証拠に跡部こっちを見もしないんだもん。難しい顔で本読むなんて、忍足と同じことしてる。これがきっと『読書の秋』なんだろう。俺には満喫出来ない秋だなぁ。漫画ならともかく、跡部も忍足も読んでるの活字じゃん。それってすごく眠くなるじゃん。俺には三分も持たないよ。

「あとべぇ、何読んでんのー?」
「少なくともお前には理解出来ない類の本だ。気にすんな」
「ふぇー…」

よくある話。俺には理解出来ない本を跡部が読んでるのは本当によくある話だから、あんま気になんないんだけどさ。でもこういう時運が良いのか悪いのか、多分きっと来ちゃうんだろうな。かつんかつんって足音だけで分かる俺は何て言うかケナゲ?違うかな。違うだろうね。

「また跡部の金で美味しいもん食べとるの?ええなぁ跡部俺にも奢ったって」
「てめぇは自分で買え。俺はお前の財布じゃねぇ」
「今日はモンブランにしたん?王道やねぇ」
「忍足一口食べる?」
「ええよ折角買うてもらったんやから自分で食い」
「ふぁーい…」

忍足の方へとわざわざ向けたフォークを、自分の口の中に運ぶ。美味しいけど、忍足はあんまり好きじゃない。栗きんとんなら喜んで食べるくせに。糖度は正直変わらないと思うんだけどな。跡部にも聞いたけど、跡部もいらないって言ったから一人で食べる。美味しいけど、複雑な味。俺が静かに食べてるからか、跡部と忍足は自然と喋り出した。さっきまで跡部全然喋んなかったのに。

「跡部何読んどるの?明らかに表紙の文字が英語やないけど」
「ドイツの歴史書だ。ちょっと気になることがあったからな、」
「勉強熱心やね」
「お前こそ何の…って、愚問か?」
「察しの通り」
「何だまた主人公が記憶喪失にでもなんのか?それとも交通事故か?」
「今はまだどっちも起きとらんけど、有り得ん話やないな」
「どちらにせよヒーローとヒロインがくっつくんだろう?」
「そうか?片方が死ぬ話もあんねんで?」
「んでもって後追いでもすんのか。それともまた新しい男が現れるのか?」
「…もしかして跡部、結構話の内容気になっとんの?」
「別に。俺は興味ねぇよ」
「なら何で根掘り葉掘り聞いてくんねん」
「例えをあげたまでだ。楽しみがなくなるだろ?」
「うわぁ性悪…性質悪いな」
「おめぇの読む本は大体オチがスケスケなんだよ!!」
「跡部それが言いたかっただけやろ」
「何の話だ」

あーあー周りがびっくりするくらいべらべら喋っちゃって。普段それほど仲良くないって思われてる氷帝ホスト部の部長と人気上位(2位ではない)が食堂で仲睦まじく喋ってたら確かに新聞部も写真撮りに来るよね。仕方ないのかな。何か一人ぼっちにされたみたいでむしゃくしゃするから、どうせならもっと大きなスクープ記事作ってあげる。半分は暇潰しだけど、もう半分は違うから安心してね。


「忍足、」
「…うん?ジロー食い終わったん?美味しかった…」


がぶっ。が一番正しい音だと思う。ちゅ、なんて可愛らしいもんじゃない。だって可愛い子ぶるつもりなんて毛頭無かったもん。だから寧ろ奪うように。跡部から、忍足を。忍足の、唇を。

「……じろちゃんあまったるい…」
「えへへー」
「えへへやないわ。口の周りにクリーム付け過ぎやて、何でモンブランこない汚く食えるん?」
「ごめんね?」
「謝るんならもっと誠意を込めなさい。まぁええけど」
「そんな寛容な忍足が俺好きだよ」
「寝言は寝てから言い」
「本気なのにぃ〜」
「はいはい」

わしゃわしゃって掻き混ぜるように忍足が俺の頭を撫でる。照れ隠しで。耳赤いよ。可愛いよ好きだよ。



美味しい季節



(…実は物陰で新聞部の子達が今の場面写真に撮ってるなんてことは…明日になればすぐに分かるから言わないでおこう。あとで写真貰うけど。)

→ジロ忍というかプラスな感じ。氷帝の学食は美味しいんだろうなと思いながら書いてました。原点である『忍足は慈郎に甘い』が忠実に出せたかなぁと満足はしてます。同性にちゅーされても、「ジローならしゃあないな」って思っちゃう忍足…。その時点で既に駄目だと思うよ色々と。

20121008


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