短編 | ナノ

有効活用

「ジロー、こんな所にいやがったのか」
「うん。そだよー」

ごろん、と体を回転させて慈郎は此方を見た。間延びした声だが、いつもの眠そうな声ではない。

「だって此処のソファ気持ち良いんだもん。跡部だけ一人占めしてて狡いC」
「俺の椅子は別にあるからこのソファは座らねぇよ。客用だ客用」
「じゃあ俺お客さんになるよ」
「なれる訳ねぇだろーが。此処が何の部屋か分かってんのか?」
「跡部の部屋」

真剣な目で見つめられながら言われても。いや確かに慈郎の発言は間違っていないのだが。

「…生徒会長室だ、覚えておけ」
「だーかーら、跡部の部屋でしょ?間違ってないじゃん」

自分好みに改装しまくったくせに、と慈郎がぼやく。真実だが口にする必要は無いだろうに。はぁ、と重い溜め息をつかざるを得ない。こいつの相手は疲れる。

「ねぇ跡部」
「何だ」
「忍足連れてきても良い?」
「は?」
「忍足呼びたいの、此処に」

ぼふんぼふんと自身の座っているソファを叩きながら、駄々を捏ねる子供のような口調で尋ねてくる。しかも上目遣いで。ぐらつきそうになる理性をぎりぎりのところで抑えて、出来るだけ相手を見ないように手で軽く目を押さえながら言葉を返した。

「駄目だ。あれを呼んだらお前が此処から動かなくなるだろ」
「Aー!!ひっどい跡部!俺忍足呼びたいのに!」
「お前があれを呼びたい理由は枕代わりだろうが!」
「それもあるけどさー…」

ぶーぶーと文句を垂れつつ、何やらごにょごにょと口ごもる慈郎。何だ他に理由でもあるのかと、やや苛立った声で聞こうとした時だった。

「…ここ防音だしソファ柔らかいから、忍足とアレなことするのに最適なんだもん…」

さぁ、っと一気に血の気が引いた。いやお前何言ってんの?というか此処でナニしようとしてたんだよお前は!!若干顔を赤らめながら恥ずかしそうに話す慈郎を殴りたくなったが、その天使と称されるに値する美しい顔を殴れる訳がない俺は無く無く震える拳を降ろした。








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