短編 | ナノ

覚醒する三秒前

気を抜くといつもこうだ。視界が黄色くなって、唇に何かが触れて、気が付いた時にはもう遅かった。いつまでも膝の上で眠っていると思い込んでいたから、反応に遅れて行動を制することも出来ずにされるがまま。さっきまで喋っていた宍戸の顔が引きつった。あと確実に、空気が凍った。

「じ、ろちゃん起き」
「ん」

問答無用と言わんばかりに押し倒され、見動きがとれなくなる。いつものとろんとした眠くて蕩けそうな瞳なら、まだ手の施しようがある。けれど今の彼の目は、餌を見つけた動物のようで。抵抗したって敵わないと雰囲気で分かるから、何も手を出さないことに決めた。

「っ忍足!!抵抗なりなんなりしろよ!」
「そうやなぁ…でももう手遅れやし…」

あと相手の機嫌が悪くなるし。言い訳をつらつらと述べていたら、いつの間にか唇が下に下がっていた。首筋に顔を埋めたかと思えば、軽く吸われる。ちくりとした鈍い痛みが何度も繰り返し。跡ついたやろうな、とぼんやり思う。そこらへんに跡がついたら確実に制服の時見られるんやけど。慈郎は知らないんだろう、きっと。(確心犯だったら怖い)

「…じろちゃん、テニスしよ」
「ん、ん…」
「こんなん部活終わったらいくらでもさせたるさかい、今は我慢しい」
「…ほんと?」
「部活での頑張り次第やなぁ」
「じゃあ、頑張る!」

勢い良く体が離れる。そんなに近かったのか、と今更気付いた。ごっほーびごっほーびとるんるんでテニスコートへ走ってゆく慈郎を見て、ふぅと小さく溜め息をついた。



「…お前、何か言うこと無いのか」
「今日はじろちゃんちゃあんと起きとると思うで?」
「そう言うことじゃねえんだよ」


→ジロ忍日常、とか。隙あらば襲ってきそうなじろちゃんと、それを軽くかわす忍足。忍足は途中から第三者目線になりそう。








「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -