短編 | ナノ

視線が呼んでるから

俺が言えたモンやない事くらい理解しとるつもりや。でもな、何でこういう時にタイミング良く俺の持っとる小説は終わってまうんやろか。いつもは彼を待たせる側にいただけに、正直言って何をしたら良いのか分からない。彼の行動を真似てみるとか?でもそんな事したら邪魔になるだけやしなぁ。実体験から言わせてもらうなら、声をかけないほうが良い。でもあれやん、ほっといたらこの子ずっと俺放置するやん。…あんまされた事無いけどな。……分かっとるんや本当は。俺はどうしたいか、俺の中ですでに答えは決まっとるんやよ。でもそれってな、驕りやんか。『恋人』やから何してもええって訳やないやん。恋人は監禁したり束縛したりしても法に触れませんとかそんな訳ないやろ?跡部やないんやし。(←これは単なる偏見)

ええわもうええ。このまま心閉ざしてしまえばええんや、そうすれば何も考えずに済むんやし。目を閉じて、溶けるようにふわりと、

「ゆーちゃん、本読み終わった?」
「―っっ!!び、びっくりした、急に振り向かんといてぇな、」
「あ、ごめんね?何かね、ゆうちゃんに見つめられてる気がしたのー」
「…自分鋭いな、」
「うん?」
「いや、何でもないけど。あぁそうやね、本は読み終わったで」
「そっか、じゃあちょっと待ってね、」

満面の笑みでにっこり微笑まれたら何も言えへんようなるわ。何でこの子は俺が気を抜いた時にそんなこと言うんやろう。思わずぐらっときてしまったやんか。…にしても、彼は俺が本読み終わるのずっと待っとったんやなぁ。健気で可愛え。その間もしかして今の俺のように思っとったりは…したんやろか。どうやろ、彼は俺みたいに悩んだりするイメージがまるで無いから(悪く言えば頭からっぽやから)そんなこと無いのかも知れない。でも考えてなかったという可能性はゼロとは限らん訳で。そう考えるとあれやな、やっぱりこの子はむっちゃ可愛えなぁ。じんわりと心に沁みるあったかい感情をしみじみと感じながら、俺は座っていたソファにごろり寝転がった。


→慈郎を待たせるのは良くあるけど、待たされるのにはあんまり慣れてない忍足。自分が待ってると思ってたら待たせてたはなし。







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