短編 | ナノ

熱々バカップルと氷の帝王様

真夏の氷帝学園テニスコートでは、今日も元気にテニス部員が汗をかきながら練習をしている。氷帝の男子テニス部員は他と比べて断然人数が多いので、コートが使えるのは大体レギュラーか準レギュラーまでで他の部員達は玉拾いやら各自のトレーニングを行っている。
その中で。テニスコート内にある一つのベンチに、二人のレギュラーの部員が向かい合って座っていた。正しくは、ベンチに座っているのは一人で、もう一人はその男の膝の上に座っている。かなりの密着率で。しかも、様子がおかしかった。気分が悪そうとかではなく、寧ろその逆で。

「、ゆうちゃん、キモチイイ?」
「っんあ、ああっ、んっ、」
「ゆうちゃんえっろーい…おれイキそう…」

誰から見ても明らかに、二人が行っているのは『性交』、つまりセックスだった。


***


監督である榊が不在で、他のレギュラー陣がコート内で真剣に試合をしている最中である。それなのに、二人はそんな彼らを見ることなく、二人だけの世界に没頭中で戻ってこない。しかも、暑さからか理性が弾け飛んだ忍足の口からはとめどなく嬌声がもれて、周囲にいる部員達に悪影響を与えていることを当の本人達は知らない。
忍足はいつもより一つか二つ大きめのサイズのジャージ(多分樺地あたりのサイズ)を肩を露出させた状態(つまり半脱げ状態)で着ている。下はジャージに隠されていて見えないが、すらりと伸びる足を見るに着ているようには見えない。まずその時点で、二人にテニスをする気は無さそうだった。(慈郎は全部着たままである)

「あ、ああっ、じろ、」
「うん、ゆうちゃんもイく?いいよ、一緒にイこ?」
「んんっ、あっ、ああっ…!!」
「…っ、あっついけどキモチイイねー、やっぱゆうちゃんとのせっくすはサイコーだね!」
「はぁ、はっ…、…あつい……」
「顔真っ赤だよ、ゆうちゃん」
「さよか…、」

こくり、と小さく忍足の喉が動く。テニスよりも激しい運動をしたであろう忍足の身体はじんわりと汗に濡れて、いつもはポーカーフェイスを崩さない顔に若干の疲労が見える。意識を留めるのに必死で、段々と目を開けることすら億劫になってきた忍足は、ぼすんと慈郎に自身の身体を預けた。慈郎が忍足の変化に気付いて「ゆうちゃん?」と名を呼んだが、忍足はややかすれた声で小さく「…ん、」と呟いただけだった。

「あれ、ゆうちゃん?どうしたのゆうちゃん!?」
「バーカ普通に考えて熱中症だろーが。場所を考えて行為をしろ、」
「あ、あとべ。あとべいたの?」

きょとんと慈郎が尋ねると、ペットボトル片手に跡部が明らかに不機嫌そうな顔で遠くのコートに一度目をやりながら答える。

「さっきまで日吉と試合してた。全くお前らは目を離すと何しでかすか分かったもんじゃねぇな、」
「え?あ、えへへ〜、」
「笑って誤魔化すな。…忍足、」
「ん…?…っひぁ!!」

跡部が忍足の露出した首にぴたりと冷たい水の入ったペットボトルを当てると、さっきまでぴくりとも動かなかった忍足の身体がびくん、と過剰なほどに反応した。(繋がったままだった其処まで若干動いたので)思わず声が出るほどに驚いた忍足はすぐに跡部の方を向くことが出来なかったので、痺れを切らした跡部が「上を向け、」と忍足に命令する。身体を動かすよりもそちらの方が楽だったので忍足が素直に従うと、跡部はペットボトルの水を口に含んで忍足の口にそれを流し込んだ。俗に言う、『口移し』である。慈郎が「あー!!ずるい!!」と叫んだ。

「っん…、ふぁ…っ、」
「あとべひっどーい!!おれのゆうちゃん!!」
「ん、お前なぁ…こっちはただ水分補給を…」
「ゆうちゃんすっごくとろんとろんの目してるじゃんか!おれもちゅーする!!」
「だからキスしてる訳じゃなくてだな…」
「ちゅーっ!!」
「んぁ、じろ、ちょっ…!!ん、んんっ…」
「だからここでやるなって言ってんだろうか!ジロー忍足を襲うな!」
「先にちゅーしたのはあとべだもん!!」
「セックスしてたのはお前らだろーが!!」
「……何でもええんやけど、はよう抜いてくれへん…?俺動けんのやけど…っ、」
「あ。そーいえばそーだね」
「…そうだな。ほら、」
「え?…っっっ!!!!」

何の躊躇いもなく、跡部は忍足の身体を掴んで持ち上げる。ずる、と引き抜かれた感触に忍足が悶えるのを気にすることなく、跡部は忍足を慈郎から離した。そして「ジローお前はコートに入ってテニスしてろ、」と命令すると、忍足を小脇に抱えてすたすたと部室へ向かっていった。勿論慈郎は不平不満を口にしたが、跡部はそ知らぬふりである。

「……えーっと、すまん…」
「お前はとりあえずシャワー浴びて休憩してろ。熱中症治ってないだろ」
「…まだ水分が足りないって言うたらキスしてくれるん?」
「そこまで喋れたら平気だろう」
「残念」

上手かったのになぁ、と忍足は呟いた後、「あ、喋れるけど今歩けへんからな、」と跡部にへらりと笑った。


→えろって言ってもあんまり描写をしていない小説です。忍足に口移し平然とする跡部様書くのがとっても楽しかったです。







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