短編 | ナノ

俺まくら

忍足の膝枕は、とっても心地よい。すぐにうとうとして、熟睡できる完璧な俺の枕だ。誰にも渡すつもりなんてない。

そういえば忍足は、俺を後ろから抱き締めるのが好きなようだ。理由はまぁ身長差を考えれば抱きやすいから、になるんだろうが、本当は違うことを俺は知っている。忍足は自分の辛い顔や苦しんでいる顔を人に見せたくないからだ。俺にぐらいは見せても良いんじゃないの?と言ったら、俺の肩に顔をうずめて泣かれたことがある。その時は忍足の泣く声がずっと俺の耳に響いてきて、何だか俺まで泣きたい気分になったのを覚えている。

…って言いたいのはそこじゃなかった。何だったか、あぁ枕の話か。付き合う前、俺が一方的に片思いをしていた頃。俺は忍足と正面で抱き合うのが苦手だった。だってあれ身長が如実に…って違う。そうじゃなくて。忍足に抱きついて、(又は抱き締められて)胸元に顔を埋めた時のあの温かさと忍足の匂いが、俺を覚醒させるからだ。快眠なんて話じゃない。むしろどきどきして絶対眠れない。ふわり、と鼻を擽る忍足の匂いは、俺を興奮させる。あれは駄目だ、麻薬みたいなものだ。一度味わってしまったら、もう二度と抜け出せなくなる位危険なものだ。実際にそうだった。眠れなくなると分かっているのに、欲しくてたまらなくなる。俺にとっては一大事だ。睡眠を一番大事にする俺にとって、寝ることよりも優先したいことがあるなんて。

まぁ結局何やかんやで俺達はめでたく両思いになり付き合うことなったので、今俺の枕は完全に俺のものに―って思ってたらあの猿俺の枕で寝てんじゃねぇよ俺のだぞ!頬をぷくぅ、と膨らませた俺に気付いたのか、忍足が小さく笑って手招きをする。何かと思って近付いてみれば、ぽすんと頭を引き寄せられて。

「今は俺の肩で我慢してな、俺の可愛い『恋人』さん?」

そんなこと言われたら、素直に従うしかないじゃないか!!








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