短編 | ナノ

排出された感情

青のひとみからこぼれおちた、とうめいな液体にふれる。何でもないただの水だけれど、この中にはゆうちゃんのかなしいキモチやくるしいキモチがつまっていて、それを身体からハイシュツしたゆうちゃんは今すごくぼんやりしている。ゆうちゃんの目にはなんにもうつっていなくて、おれのすがたでさえもうつしてはいない。かなしいけれど、でもだいじょうぶ。そばにいるからだいじょうぶだよ。だってほら、ゆうちゃんはずっと、おれの服をつかんで放さないから。つながってるからだいじょうぶなんだよ。

かんじょうを表に出すのはとてもタイヘンなことなんだってあとべが言っていた。ゆうちゃんにとってそれは、とってもこわいことなんだって。だからたまに、かんじょうがゆうちゃんの中でバクハツして、こうやってぽたぽたと、ちょっとしょっぱい雨がふるんだって。なきたくてもなけないから、ゆうちゃんはかんじょうをバクハツさせるしかないんだって。それって何だかかなしいことだねって言ったら、あとべはそうでもないって言った。それでぜんぶ流せるのなら、かなしくはないはずだって。だってかなしいキモチは、ほほをつたって流れていったはずだろう?って。おれはよくわからないけど、よくわからなかったから、そんなゆうちゃんのそばにいたいなっておもった。

ゆうちゃんがハイシュツしたキモチは、どうなるんだろうか。この手にすくいあげたとうめいな水は、ゆうちゃんの大事なキモチだったもので、それをかんたんにすててしまうことはおれには出来なかった。ただの水だけれど、ただの水なんかじゃないんだ。これは、おれがだいすきなゆうちゃんの大事なモノだから。


そっとくちびるが自分の手にふれる。まるで口付けるように、一度だけふれて、くちびるをはなした。



(ゆうちゃんのすべてがだいすきだから、おれはゆうちゃんがこぼしたなみださえも受け入れるよ)


→あまり深く考えないでね、っていう話を書くのが好きです。ゆうちゃんならすべて許容してしまえそうな彼の今後が心配な気も…いや、そんな彼が大好きなんですけどね。







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