短編 | ナノ

一番のしあわせ

『ふるえる瞼』番外編。というか慈郎視点で書くとこうなる。いつもの砂糖まみれ。


今日はゆうちゃんのじっか?の大阪に行くことになりました。大型連休なのでこーれーぎょーじだってゆうちゃんは言ってました。しんかんせんで行くから電車代ぐらいは払ってって言われたので、俺は素直にお母さんに「電車代ちょうだい」って言いました。どれぐらいになるかは分かんなかったので、「しんかんせんでゆうちゃんの実家に行くの」って言ったら「それならこれくらいじゃない?」とお金をくれました。おれはもらったお金と二泊三日分のお泊まりセットを持ってゆうちゃん家に泊まりに行きました。


しんかんせんはとっても速くって、あっという間に東京から大阪に着きました。うとうとする暇も無くて、おれはずっと窓の外を見ながらはしゃいでいました。あまりにうるさかったようでゆうちゃんに二回くらいきびしくおこられてしまいました。そんなおれたちを周りの人たちはやわらかい目で見ていました。


大阪に着くと、ゆうちゃんのイトコのけんやくんって言う人が待っていました。けんやくんはゆうちゃんと血がつながってるのにゆうちゃんにあんまり似ていなくて、何でかなって思ったら頭の色が全然違ってました。
けんやくんはおれのことを「中一の子」って言ったので、ちゃんと訂正しました。身長は低いけど、おれはゆうちゃんと同じ中学三年生ですって。けんやくんはすっごくおどろいていました。



大阪に着いたらけんやくんの弟にも会いました。すぐにいなくなってしまったけれど、ゆうちゃんと少しだけおはなししてました。けんやくんの弟くんを見るゆうちゃんの目や声がとても優しかったので、ゆうちゃんは弟くんのことがすきなんだなぁと思いました。らぶじゃなくて、らいくの方で。


最初は3人でカードゲームをしてたんだけど、おれがどうしてもねてしまうので外に出かけることにしました。大阪は東京とはまた違ったにおいがして、とっても新鮮なキモチになりました。でもやっぱり眠かったので、ゆうちゃんの腕にしがみつきながら歩いてました。


ふと、じゅうじゅうとおいしそうな音とともにふわりと強い香りがして、おれは足を止めました。においの先をたどると、東京でも見たことのあるようなたこ焼き屋さんの屋台があって、くるくると丸いそれをキレーに回していました。とってもキレーでおいしそうだったので、おれはゆうちゃんの腕を引っ張って屋台に近寄りました。ゆうちゃんはいつもみたいに「しゃあないなぁ」と笑って、おれについてきてくれました。おれは見えていなかったけど、けんやくんもついてきてくれてました。屋台のおじさんはおれを見ると、最初っからたこ焼きを作ってくれました。どろどろの生地って言うのをでこぼこの鉄板に流して紅しょうがとか入れておっきなたこを入れて回す姿は、前にゆうちゃんの家に泊まった時にゆうちゃんが作ってくれたのにすごく似ていて、これが本場って言うのかなぁとぼんやり思いました。ゆうちゃんはたこ焼きにくぎづけなおれの隣で財布を取り出していて、たこ焼きが出来上がるとすぐにおじさんにお金を差し出しました。おれがきょとんとした目で見つめている
と、ゆうちゃんははい、とあつあつのたこ焼きをおれにわたしました。容器も熱くてほかほかでにおいもキツいそれを、おれはよくわからず受け取るとゆうちゃんが「食べたかったんやろ?」って言ってくれました。おれは今すぐゆうちゃんに抱きつきたかったけれど、たこ焼きを持ってて無理だったので食べ終わったら抱きつこうと思いました。
熱いたこ焼きはとってもおいしそうだったので、おれはすぐに口の中に入れました。途端に口の中をやけどしてしまいました。ゆうちゃんはそんなおれを見て笑いつつ、心配してくれました。ゆうちゃんはおれのために水を買ってきてくれて、おれはゆうちゃんからもらった水をこくこくと飲みました。それから「口開けて」と言われたので口を開けると、ゆうちゃんがおれの口の中を見ながら「大丈夫?」って聞きました。ちょっとひりひりするけどやっぱりあつあつのたこ焼きが食べたかったので、(せっかくおじさんが作ってくれたんだしね)おれは元気よく「だいじょーぶ!!」と答えました。何だかみんなにこにこしていました。


それからぶらぶらと色んなところに行きました。目新しいそれにおれはとっても興奮しました。東京に帰ったらがっくんやししどに教えてあげなきゃねってゆうちゃんに言ったら、今度はみんなで来たらええよって言ってくれたのですごくうれしくなりました。だってゆうちゃんはあんまり自分のこととか話してくれないから、聞いてもいいのかなって、教えてくれるのかなって思うとすごくわくわくしてどきどきして、ゆうちゃんのことがもっといっぱい知りたくなりました。



色んなところに行ったので、帰ってきたらおれはすぐにねてしまいました。ふわふわとしあわせな夢を見ました。頭を優しくなでられて、手を握られたような温かさを感じました。きっとゆうちゃんが触ってくれているんだろうなと思った通り、おれを起こしたのはゆうちゃんでした。おれはその時、ねおきだったのでねぼけていてここがどこだか全然覚えていなかったので、おれの顔をのぞきこむゆうちゃんにぎゅっと抱きつきました。ゆうちゃんは慣れた手つきでおれを起こしてくれました。


ゆうちゃんと一緒にお風呂に入りに行こうとして、ふとけんやくんにお礼を言ってなかったことをとうとつに思い出しました。ゆうちゃんに言うと、「なら今言ってきたり」って言われたのでおれはけんやくんのいる場所に走りました。
けんやくんは名前を呼んでもおれを見てくれなかったけれど、とくちょーてきな頭のおかげでけんやくんって分かりました。おれはけんやくんに今日のお礼を言って、ゆうちゃんのとこに戻ろうかなって思った時にけんやくんがこっちを向きました。何だか暗いというかよくない顔でした。
けんやくんはおれに、今しあわせかと聞きました。何でそんなこと聞くんだろう、と思いましたが、頭に思い浮かべてみることにしました。ずっとすきだったゆうちゃんがおれをすきだと言ってくれて、こいびとどうしになって、たくさんたくさんふれあって。ゆうちゃんのほほえむ顔とか照れる顔とかいっぱい出てきて、思わず顔がゆるくなりました。おれにとってそれは、一番の『しあわせ』だと思ったので、おれはけんやくんにそう言いました。


ゆうちゃんに呼ばれてお風呂場へもどると、ゆうちゃんといっしょにお風呂に入りました。ゆったりとお風呂につかりながら、こっそりとおれはゆうちゃんにくっつこうとして失敗しました。「ここで欲情したら明日口利かんからな」と言われたので出来るだけぬれたゆうちゃんを見ないように気をつけました。ちょっとつらかったです。


→途中でぶつ切りみたいになってしまいましたが、文章があまりに長くなって気力がなくなったのです。誰かに喋ってるみたいな、日記風に書くのがけっこう楽しかったです。向こうでは分かりにくい、謙也が慈郎に聞きたかったことの意味を書きたかったんですよ。分かりにくいけどね。







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