短編 | ナノ

発情期

中一か中二の夏。じろ忍。

ゆうちゃんのテニスは、はじめて見た時からすごくすきだ。おれとはぜんぜんプレイスタイルが違うから、きょーかんしたりは出来ないけど。
ゆうちゃんが真剣に、テニスに熱中してる姿を見ると、何だかどきどきしてくる。それは強い人とテニスをする時とかに似ているけれど、わくわくとかじゃないんだ。ゆうちゃんの場合は何て言うか…身体が熱くなるのは似てるけれど、何かが違う。しんぞーがうるさくって、顔が熱くなって、見たいけど見れない。でも見たい。何でかな、すっごく自分とかっとう?してる気がする。だってだって、おれゆうちゃんのテニスが見たいんだもん。そのはず、だもん。

試合が終わって、ゆうちゃんがこっちに来る。うん、ベンチだから当たり前だよね。のうのうと日陰のベンチで寝転がっていたおれの前に来たゆうちゃんは、したたる汗をタオルでぬぐいながらおれを見た。(タオルね、滝ちゃんが渡してた。気が利くってこういうことを言うんだよね)

「…自分はまだ試合やないの?」
「うーん…まだっぽいね」
「そう。ならちょっとどいてくれへん?」

座りたいねんってゆうちゃんが言ったから、おれは言われた通りに右に避けた。どけって言ったけど、ゆうちゃんは別にどっか行けって言ったわけじゃないのでベンチから離れない。だって炎天下の日差しは浴び続けると良くないってあとべが言ってたもん。あとベンチ楽だもん。そこらへんで寝てるよりは。

「…暑いなぁ」
「そだね〜。溶けちゃいそう」
「ホントに人間が溶けたら面白いなぁ」

けらけらと笑うゆうちゃん。ベンチって案外近いんだね。ちょっとびっくりした。何となくゆうちゃんに触ってみたくなって、そろりと手を伸ばす。汗かいてるから冷たいはずはないって分かってるんだけど、ゆうちゃんの髪や目の色ってどこか涼しそうに見えるんだよね。かんしょく?だっけ。忘れちゃったけど。
伸ばした手はやんわりと避けられた。あっという間に。じ、っとゆうちゃんを見つめたら、「今は身体熱いから堪忍して」って言われちゃった。さっきまでラケットを握っていた手は、当たり前だけど温かかった。


→お題没小説。続くかもしれない…(笑)







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