短編 | ナノ

融解する温度

「ゆうちゃんいいにおいするね」
「ん?あぁ、飴ちゃん舐めとる今」
「あめちゃんあるの?おれもほしい!」
「ええよ。ちょっと待ってな、確かポケットん中に…」
「ゆうちゃんこっちむいて」
「え?」

ぶちゅう。何が起こったのかよく分かっていない侑士の鈍い動きに反比例するように、慈郎はするりと舌を滑り込ませる。くちゅ、と水音がしたと思えば、あっさりと引き抜かれる舌。舌の上にあったはずのものが無くなっていることに気付くのも遅く。

「ありがと、ゆうちゃん」

にっこりにこやかに微笑まれれば、侑士は文句の一つも言えなくなった。


***

「ってことがあったんやけどな」
「うん、つまりはお前らバカップルの惚気話だなよーく分かった」
「いやちゃうねん。俺は自分らに聞きたいことがあんねん」
「何だよ」
「あの子って他の子にもそういうことやるん?」
「ぶっ」
「そ、それはねぇだろ…多分」
「ごほ、ごほっ…そうだな、確かに間接キスとか平気でやりそうな奴だよな」
「宍戸されたことあんのか」
「されたっつーか、飲んでたペットボトル頂戴って言われてやったら全部飲まれたことならある」
「それは俺もあるって。あと同じ箸使ったこともあるぜ」
「それはええわ。俺かて謙也や謙也の弟とやったことあるし」
「へぇー侑士って軽く潔癖症のイメージがあったからそういうのしたことねぇんだと思ってた」
「神経質やって言われるけど潔癖症はないわ」
「つまりどういうことだよ」
「間接キスはええねん。人の口ん中に入っとったもんを平気で食うかの話や」
「んーそうだなぁ…俺は無いな」
「同じく俺もねぇよ。大体唾液の共有とか虫歯移るじゃねーか」
「フツーはないよなぁ…普通は」
「…確かにあいつは普通の神経してねぇけどよ…流石にねぇと思うぜ?」
「じゃ、確かめてみっか。侑士飴くれ」
「飴やのうて飴ちゃんって言い。ん、」
「もしちゅーされそうになったら逃げろよ、飴投げつけてでもな」
「そんな可哀想な事してやんなや」
「お前恋人が自分以外の男とちゅーしても平気なのか」
「…ノーコメントで」(目逸らし)
「おいおい…」
「おーい侑士ー、ジローちゃんと受け取ったぜ!」
「どしたのゆうちゃん?」
「それならええんやけどな」
「?あ、ゆうちゃんおれね、今あめちゃん持ってるの」
「あぁ知っとるよ(だって俺のやし)」
「ゆうちゃんにもわけてあげる〜」
「は?どうやって…ん、」

ぽい、と自身の口に飴ちゃんを放り込むと、侑士に一気に近付いた慈郎は再び侑士の口を奪う。甘ったるい匂いが鼻腔を掠め、うっすら口を開けると少々卑猥な音が響いた。
さっきのよりも濃厚な口付けを受け入れる。いつの間にやら侑士の口内に、先程慈郎が放り込んでいた飴が紛れ込んでいた。その飴を、熱い舌で何度も舐めまわすように動く慈郎の舌。がつがつと肉食獣のように、口内に当たる舌にただ翻弄されて段々と頭がぼんやりしてくる。つまり酸素不足で酸欠になっている、ということなのだが、その感覚はあの行為に似ている。

「「……。」」
「ん、んむ、ふ、んっ…、」
「…なぁ宍戸」
「…何だ岳人」
「やっぱりただの惚気話だったんじゃね?」
「奇遇だな、俺も今同じこと思った」
「…どうする?」
「…どうするって…どうすんだよ」
「とりあえず言えるのは、ここはヤバイから早くどっか逃げようって言いたい」
「同感だな。逃げるぞ!」
「アイアイサー!」


「…っ、は、じ、ろちゃ、ん?いつまでヤんの、これ…っ、」
「ん、えっとね、あめちゃんなくなるまで」
「さよか、ん、ぁっ、じろちゃ、」
「ゆうちゃん、かわいいー」
「ん、ふ、あ…っ」


→まだヤってない。ホントだよ。
会話文のつもりで書いていたのですが、あいだに文章書いたのでこっちに。最後のやつは明らかにいらないですね。書いててすっごく楽しかったです。







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