二人の楽園
学校の裏庭。そこはおれにとって絶好のお昼寝ポイントで、おっきな木にもたれかかって寝るのが好きだった。太陽がさんさんと輝いていても、木の影のおかげでまぶしくないし。あと日陰になるから比較的涼しいしね。
今日はゆうちゃんと二人で、一番眠くなる時間帯にサボりに興じている。あとべが知ったら怒られるけど、午後ってご飯食べた後だし段々暖かくなるしでどうしても眠たくなるんだもん、仕方ないよ。裏庭に咲いたキレーな草花を見ながら、ゆうちゃんの膝の上にだらりと座ったおれはぽつりと呟いた。
「春って黄色いお花がいっぱい咲くよね」
「そやねぇ」
やわらかくてやさしい声音が耳に心地よい。ぶんこぼん、っていう小さな本を読んでいたゆうちゃんは、そっとしおりをはさんだ。
「タンポポとか、菜の花とかね」
「タンポポ見るとじろちゃんの頭に似とるなぁって思うで」
「それよく言われるよ」
「だからちょっとびっくりするわぁ」
一瞬だけ見えた悲しい表情。おれはそれを見逃さない。おれがどこかで寝ている時に起こしに来てくれるのは大体ゆうちゃんだから(樺ちゃんとか宍戸とか岳人とかも起こしに来てくれてたんだけど、ゆうちゃんと付き合ってからはずっとゆうちゃんが起こしてくれる)黄色い花を見るとおれだと勘違いしちゃうようになったのかな。何だかすごくうれしい気がするけど、ゆうちゃんはそうじゃない。見つけたと思ったらおれじゃないんだもんね、それはおれもイヤかも。
「…おれはここにいるよ?」
「…そやな、つい」
ゆうちゃんは大人っぽくてクールでカッコイイってみんな言うけれど、ホントはすごく子どもっぽいというか何て言うかともかくホントは違うんだ。ゆうちゃんはホントはすごくやさしくされたくて、誰かにぎゅって抱きしめて欲しい人。だからおれはこっそりと、ゆうちゃんの手を握る。
「おれはゆうちゃんのそばにずっといるよ」
「…うん」
「ゆうちゃん」
「何?じろちゃ、」
困ったようにはにかむゆうちゃんもキレイだけど。
ゆうちゃんがシアワセの方がおれうれしいんだよね。だからね。
「寂しくないよ。独りじゃないよ。いつでもおれは、ゆうちゃんのそばにいるから」
ぎゅってゆうちゃんを抱きしめて、それでも足りないならもっと抱きしめる。二人しかいない空間で、おれはゆうちゃんとシアワセを感じていたいから。
→この話、ホントは前に書いた春の話に入らなかったネタを入れるつもりで考えました。のでゆうちゃんに言わせてみました。それだけで満足してたんですが、話の続きを考えてたらじろちゃんがゆうちゃんといちゃいちゃし出した(笑)のでそのままいちゃいちゃしてもらいました。バカップルは書いてて楽しいので好きです。