短編 | ナノ

spring lovers

「ゆうちゃん見て見て、タンポポ!」

ぶんぶんと指差した手を上下に振りながら、(疲れないんだろうか)きらっきらの目を此方に向けてくる俺の天使ちゃん。比喩ではない、あれは存在が天使なのだ。

「春やねぇ」
「うん!ちっちゃい白い花とかつくしとかいっぱい咲いてるよ!!あ、ちょうちょ!」

周りをふわふわと飛んでいた蝶を追いかける慈郎を目だけで追う。元気やなこの子。中学生というより幼稚園児みたいなやっちゃなぁ。ハードルが面白いくらい低い。

「足元はちゃんと見とくんやよ、転ぶで」
「うんわかったー…んにゃっ!!」

さっきより遠くにいたはずの慈郎が、急に視界から消えた。…いや理由は分かるけど。あまりに分かりやす過ぎて力が抜けそうである。だから言ったのに。まぁ此処は一面芝生だし、怪我をする心配は正直あまりしていないが。
きっと何かに足を引っかけたか芝生で滑ったかして転んだ慈郎は、すぐにむくっと起き上がってきょろきょろと頭を動かした。残念ながら、追いかけていたモンシロチョウは何処かへ飛んでいってしまったことを俺は知っている。だって彼より視力良いし。

「ちょうちょいなくなっちゃった!ゆうちゃーんっ!」
「俺はここにおるで」
「分かったー!」

ぱんぱんと体についた草やら砂やらをはたいて落とすと、俺の方を見てにこりと笑う。あ、分かった。慈郎のしたいことが。
慈郎は全速力で俺の方へと走ってきた。慈郎には分からんやろうけど、激突されると俺慈郎を受け止められる自信がないんやけどな。まぁいいわ。一緒に倒れてしまえばええんやし。やっぱり思った通りに慈郎は俺に勢い良く抱きついてきて、俺は慈郎に押し倒された。

「どーん!」
「はいはい」
「はるのにおいがするね!」
「そやね、じろちゃんは楽しそうやね〜」
「うん!だってはるだもん!」

おれね、はるだいすきなの!
きゃっきゃしながら俺の体の上で手に届く範囲の花を摘み始めた慈郎を見つめていると、「花かんむり作ってあげる〜」と微笑まれて文句が言えなくなってしまった。


→ジローって春が好きそうだなぁと思って。(ゲーム内で公言してましたね確か)それで、春の草花を愛でるじろちゃんって可愛いなぁと思って書きました。えろばっか書いてたので反動ですごくさわやか…さわやか?な感じ。お前らホントにいくつやねん、と書いてて思った。







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