短編 | ナノ

不純すぎるこのキモチも

えろたりさんと白じろちゃん。ちょっとアレな話。

久し振りに手荒な扱いを受けた。最近はあまり無かったから、ちょっと油断していたのかも知れない。セフレの一人が何やら荒れていたらしく、殴られたとかではないが行為が荒々しかった。
こういう時には、本命で癒すに限る。相手がセフレのなんたるかを知らないことを利用して、本命以外の人間と身体の関係を持ち続けている俺はかなり最低な人間だろう。それでも、本命にはまだ足りないものがある。巧い下手の問題では無くて。


***


ゆうちゃんが帰ってきた。何となく雰囲気が違ったから、何かあったのかなって思いながらいつもみたいに抱きついた。ふわり、と最初に香ったのは、嗅ぎ慣れていない煙草の匂い。それから、違うシャンプーの香り。またセフレの人とシてきたんだって分かって、何だか胸の辺りがもやもやした。何だろう、よくわからない。
ゆうちゃんは俺以外の人とセックスをしている。それは昔からで、俺と付き合う前からそうだった。だから何とも思わなかったし、セックスを知ってからはこんなに気持ち良いんなら仕方無いよね、と思っていた。けれど。

(何でだろう、何か…)

テニスの試合に負けたって、羊肉が食べれなくなったって、こんなに胸がもやもやしたことはなくて。どうしたらこのもやもやが、消えてくれるのかがわからなかった。

「いつもと違う匂いがする」
「あぁすまんな、シャワー浴びてきてん」

ラブホで?と聞くまでもなかった。見ただけでそんなこと分かってしまうよ。何だか涙が出そうなくらい、胸がきゅってするの。ねぇ、どうしたらいいの。

「…じろちゃん?」
「……俺じゃ、ダメなの?」
「じろちゃ、」
「シたいなら俺とセックスしよう。足りないなら何度でもするからさ、俺とセックスしようよ。それじゃダメなの?」

他の人の匂いのするゆうちゃんが。まるで自分の知らないゆうちゃんみたいで怖いんだ。

「俺ゆうちゃんより下手だけど、ゆうちゃんより先にいっちゃうけどさ、ゆうちゃんのこと他の誰より大好きなんだよ」

だからお願い。他の人とセックスしないでって。泣きながらゆうちゃんの肩にすがり付いた。


***


びっくりした。今日はかなり気を抜いていたのかも知れない。まさか慈郎が泣くとは思わなかった。泣かせたのは俺だけど。
慈郎はセフレの意味を理解していないと思っていた。けれど本当は、ある程度理解していたのかもしれない。俺にとってのセフレは『利害の一致関係』であって、そこに愛だの恋だのの余計な感情は一切無いから、本命は慈郎一人である。確信を持って言える。慈郎に告白されて、することしてからはもう俺には慈郎一人しかいない。心は慈郎にしか許してない。

ずっと欲しかったものがある。それは物ではないから、易々と与えられるものではなかったのだ。

「それは嫉妬?それとも執着?」
「…え?」

慈郎はきょとんとして俺を見た。そう、慈郎は知らなかったのだ。人を妬む気持ちも、誰かに執着することも。

「どっちでもええねん。なぁ慈郎、」
「なぁに?」
「純粋無垢で何にも穢れてない自分にこんな感情植え付けるなんて、最低やと思うけどな。それでも、執着して欲しいんよ。我儘やけど」

俺だけを見て欲しいとか、俺だけに笑って欲しいとか。皆の天使ちゃんに対して思う感情にしては澱んだそれを、天使本人にも感じて欲しいやなんて。我儘以外の何者でもない。

「俺とずっと一緒におりたいんなら、俺のことだけ見とって」

言った後に気付いた。それは彼の台詞だろう。何だか申し訳無く思い始めておそるおそる慈郎の方を見れば、慈郎はじっと俺を見つめていた。

「見てるよ。俺、ゆうちゃんのことずっと見てるから」

だからゆうちゃんの全部俺にちょうだい。
慈郎は泣きながら笑ってそう言った。



→えろたりさんが慈郎だけになる方法的な。天使ちゃんが嫉妬とか執着とか覚えることに若干の申し訳なさを感じながらも、それを一番欲しがっているえろたりさんの話。この後えろたりさんは慈郎に尽くすタイプの人間になる(慈郎が何も出来ないから)とか色々ネタに出せたら良いなと思ってます。タイトルは確かに恋だったから借りてきました。ちなみにタイトルの後に、『全部あげる』って入るつもりでした。これタイトルすっごく悩んだんです…。







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