ポッキーゲーム
「忍足、ポッキーゲームしようよ」
今日もまた女の子から貰ったであろうポッキーを食べていた慈郎が、気まぐれでふと俺に提案をする。図書館から借りた本を読んでいた俺は、はぁ、と短く返事をした。男子中学生同士でポッキーゲームとか誰が楽しいのかと思ったが、そういえばこの男は俺のこと好きやったなぁと唐突に思い出した。
数日前に告白された。返事はしていない。もう少し気まずくなるかと思ったのだが、慈郎は相も変わらず隣にいる。当たり前のように、俺の目の前にいる。不思議だと思いはしたが、本人に直接問いただせる程の度胸はなかったので言わなかった。
「はい、くわえて」
ん、と目の前に差し出されたポッキーは、遠慮してくれたのかチョコレートコーティングされた方だった。こいつポッキーの何が好きなんやろ、と思わんでもない。大好きなムースポッキーではなくスタンダードな普通のポッキーだったことにここで初めて気付いた。さっきまでずっと放置プレイだったから見てもいなかった。だって自分寝とったやんか。
くわえれば距離は近付くのは当たり前だった。顔は綺麗やんなぁと思いつつ、さく、さく、とゆっくり顔を近付けていく。あ、こいつ確信犯かもしれんわ。目が本気やん。
「ん、」
あわよくば唇を奪おうとか、そういう魂胆なんだろうか。確かに簡単に唇を奪うことが出来そうだ。何故俺はそれに気付いていたのにこの行為を了承したのだろうか。
徐々に近付いてくる顔の美しいこと。段々耐えきれなくなって目を伏せると、そっと肩に手を置かれた。もしかして自分本気でー
重なった唇。当たり前にそれは甘かった。目を開けなければ幸せかもしれない。だって俺は彼の想いを受け取ってはやれないから。
口の中にあったはずのものは全てかっさらわれた。残ったのは甘いチョコレートの味と、生々しい舌の感触だけだった。
→ジロー片思いのジロ忍。かなり放置していた話だったのでよく覚えてません。(おいおい…)