短編 | ナノ

帰省しました。

「寝るくらいならおかんとこ行ってき。台所におるで」

おれの方を見ることもしないで、カルタをやり始めたゆうちゃんから離れたおれは、ゆうちゃんの言う通り台所へお手伝いをしに行くことにした。だってゆうちゃんが言ったから。そういえばここじっか、だったっけ。血のつながったみんなが長い休みに大集合するらしい。おれは血がつながってないけど、ゆうちゃんのおかあさんとおねえさんがいいよって言ってくれたからおれも来た。ゆうちゃんのおとうさんはお仕事があって来れなかったからいないけど。

「おかあさーんお手伝いしにきましたー」

ちょっとまだ眠いけど、がまんしなくちゃだよね。だってここゆうちゃん家じゃなくておおさかだもん。寝て起きたら誰もいなかったりしたら困っちゃうもんね。
ゆうちゃんのおかあさんはおれを見るとにっこり笑って、(ゆうちゃんはおかあさん似なんだなぁと何度見ても思う)「じろちゃん、」とおれの名前を呼んだ。

「ありがとうじろちゃん、じゃあねぇ…」
「あ、お前氷帝の!」

がばっと急におれの前に現れた金髪。あれ、これ誰だっけ。ゆうちゃんの血筋は髪の毛が黒いんじゃなかったっけ?

「だれ?」
「俺のこと忘れたん!?侑士の従兄弟、忍足謙也やで!」
「ふぅん」
「反応薄っ!!」

ゆうちゃんよりもいっぱい動いていっぱいしゃべる人だなぁ。おれあんまり早いの得意じゃないんだ。ゆうちゃんみたいなやわらかくってやさしい方がおれすきだな。

「…おてつだいはー?」
「スルーか自分!?」
「じゃあこのサラダかき混ぜてくれへん?」
「はーい」
「侑士のオカンもヒドないか!?」
「謙也やかましいわ」
「だってオカン…」

ゆうちゃんのおかあさんから渡されたボウルを受け取って、ぐるぐる混ぜる。ドレッシングをからめるんだって。ゆうちゃん家でもやったことあるから大丈夫だよ、こぼさないよう注意しなきゃね。

「それにしても可愛え子やんなぁ。ウチもこんな感じの子が欲しかったわぁ〜」

ぽんぽんと頭をなでられる。ゆうちゃんのおかあさんの声じゃない。聞き覚えのない女の人の声。だれだろう、でもさっきよりもやさしい。

「ひっどいなぁオカン、目の前に本物の息子おるのにそれ言うか?大体無理矢理手伝わせとるんはオカンやで?」
「アンタが侑士君みたいに子供たちと遊ばんからやろ?何にもせぇへんのならこっち手伝ってくれたってええやん」
「う…。だってなぁ…、侑士子供の扱い得意やもん…」
「謙也はせっかちやからねぇ〜、子供と遊んでると途中から喧嘩し始めるから結果的に侑士が出てこなあかんくなるんやよね〜」
「姉ちゃんそれは言うたらあかんて…」

…なるほど。ケンヤクンのおかあさんなんだね。よくわかった、ついでにゆうちゃんが子どもたちの面倒をみてる理由も分かったよ。ケンヤクンはおかあさんとゆうちゃんのおねえさんに頭が上がらないんだね。

「そろそろええかなぁ、じろちゃん」
「あ、うん。はい、」

ゆっくりとしゃべるゆうちゃんのおかあさんの声はとっても聞きやすい。(ゆうちゃんのしゃべり方と同じだよね)きょうとべん、っていうのもしゃべれるんだって。すごいね。

「じろちゃんありがとう、ゆうちゃんのとこ戻ってもええよ」
「ほんと?ありがとー」
「あれ?俺は?」
「アンタはまだ残っとき」
「えー!何でなん!?」

ケンヤクンが何かさけんでたけど、まぁいっかって思ってゆうちゃんの元へ帰る。とてとてとおぼつかない足取りになったけど。ゆうちゃん、と名前を呼ぶと、ゆうちゃんは子どもたちとかるたをやっていた。ゆうちゃんの声がする。

「ゆうちゃんゆうちゃん、」
「んー?どないしたん、」
「おれおてつだいしてきたよ!」
「じろちゃんえらいなぁ、」
「だからね、ごほーび!!」
「あぁはいはい、ちょっと待っとき」

そう言うとゆうちゃんは子どもたちに「見たらあかんで?」と言って、それからくるりと俺の方を向いた。ゆうちゃんだ、やわらかくってやさしいおれのだいすきなゆうちゃんだ!

「ゆうちゃんっ!」
「はいはい俺やで。お利口なじろちゃんにご褒美あげなあかんなぁ」
「うんっ!ちゅーっ!!」

ぎゅっといっぱい抱き締めて、ゆうちゃんの唇をもらう。おでことかほっぺたとか色々。もうとろけちゃいそうなしあわせなちゅうを貰った。



→大阪帰省のジロ忍。謙也を出したかったんですよ。白ジロ忍の大人ネタは書いてて楽しかったです。ケンヤクンって呼ぶじろちゃん可愛いと思うんだ…。







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