短編 | ナノ

春の嵐

今日の天気は大荒れのようだと、お天気のお姉さんが言うとった。

何故か俺の机の周りに集まった仲間たちは、人が本を読んでいることなど素知らぬ顔で仲良く喋っている。今日の部活って休み?とか、学校が休止すれば良いのにとか、帰りの電車は大丈夫だろうかとか。もし電車が止まるなり遅れるなりしたらきっと跡部は「泊まってけ」と一言言うのだろう。思わず本を読むのを止めていつの間にか思考していた己に驚きつつ、全く聞いていないんだと周りに思わせるように無表情を貫き通した。

「春にこんな天気って珍しいよな」
「あーあ、せっかく咲きかけてた桜が散っちまうじゃねぇか勿体無い」
「ですねぇ…」
「…今年もやるのかな、お花見」
「やるんじゃないですか?あの人そういうの好きですし」
「残ってると良いね」

俺の膝に頭を乗せて寝ていたはずの男が、はっきりとした声音でそう言った。何だかんだ言っても彼は皆の言うことをちゃんと聞いているのだろう。目線を向けるとにこりと微笑まれて、腕が伸びてするりと頬を撫でられる。全く会話に参加していなかった俺に向かって、「ね?」と小さく問いかけたのはきっとわざとだ。

「…大丈夫やろ、多分」
「だよね〜」

彼はいつだって、俺を輪の中に入れようとしている。頼んだ訳でもないのに、と感じるのは悪い癖だとは思うが治りそうにないので深く考えないようにしよう。彼らの方に向き直った俺をいつものぴかぴかな笑顔の彼が満足そうに見ているのが分かった。








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