短編 | ナノ

一目惚れ

最初の印象は、空よりも深い蒼の色。綺麗だな、と思ったら、自然と目が覚めてしまって。

思わず彼に手を振った。気付くかな、気付かなくても構わないけど。

「(…あ、)」

目が、合った。


***


この学校に越してきて、数日が経った。ある程度雰囲気にも慣れたし、同じクラスの近くの生徒とも親しくはなったので、そろそろ気を緩めても良いかなぁなんて思いながら外を見る。幸運なことに窓側の席になったので、暇だとずっと外を見るようになった。

現在外には体育の授業をしている生徒達がちらほら存在している。寒そうやなぁ、そう言えば俺のクラスは明日やったなぁ、明日は暖かいとええなぁ。ぼんやりとそう思っていると、ふと誰かがこちらへ手を振っているのに気付く。眼鏡をかけているから誤解されがちだが、俺は視力は悪くない。はっきりくっきりと見える訳ではないが、こちらへ向かって手を振っているのは一応分かる。試しにちらりと自分と同じ列の生徒を見たが、誰一人として外を見ていないので俺なんやろう。知り合いなんておったっけ、まぁええや。

太陽を浴びてきらきら輝く髪の毛が綺麗だった。多分顔立ちはよろしいのだと思う。天使ってああいうのを言うんやろうなぁと思いながら、教師にばれないようにこっそりと手を振った。


***


今思えば、あの日あの時出会ったことで俺達の人生は変わったのだと思う。もしかしたら、本当は運命なのかもしれないけど。

「(…何て考えちゃう俺は、乙女って呼ばれちゃうのかなー…)」
「ジロー?」

起きとるん?と低い声で囁くあの人。やっぱり膝枕は良い。目を開けると彼の顔が近くにあるから。

「全く…、早く起きんと跡部に怒られるんやけど」
「んにゃ…キスしてくれたら起きる、かも…」
「ホンマかいな…」

一回だけやで、と言って、触れるだけの軽い口付け。ささやかで可愛らしい、子供をあやすかのようなキスを施されて、俺は仕方無く体を起き上がらせた。その際、自分の腕を忍足の首に回して、起き上がったと同時に唇を合わせ、舌をねじ入れる。
―ほら、『おはようのキス』ってこういうのを言うんだよ。
暗に含ませたのはこういうこと。恥ずかしがり屋さん、なんて告げたらきっと怒られるので、あえて何も言いはしなかった。







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