短編 | ナノ

ただ、それだけのこと

忍足は他人のために泣くのが好きらしい。

いや、違うってことぐらい分かるけど。俺には良さが全くもって分からないラブロマ映画を見てるとそう思うんだよね。ぼろぼろ涙溢しながら映画見てるし。これ別にお前の体験談とかじゃないんだよね?他人同士の恋愛が何でそんなに好きなの。大体これ物語だよ誰かの腐った妄想だよ?(ここまで言ったら忍足は多分「お前の好きな漫画も対して変わらんやろ」って怒りそうだから口にはしない)なんでそんなに感情移入出来るのか、俺には良く分からない。


ハッピーエンドが好きだから、ラブロマンスが好きなのだと忍足は言った。やっぱ恋人同士は結ばれなあかんやろ、と泣き腫らした顔を向けて俺に言った。うん、そんな顔も好きなんだけどさ。元より俺はお前にぞっこんラブなんだけどさ。
結ばれなあかん、という考えは、彼にとってどんな意味を孕むのだろうか。俺とお前のことを言っているのだとしたら、俺は結構頑張っているつもりだ。忍足は心の根底では俺の言葉を理解していない。だから俺は彼が理解出来るように噛み砕いて分かりやすく伝えているつもりなんだけど。分かってないよなぁ、だって伝わってねぇって雰囲気だけで分かるし。鈍感なのもいい加減にして欲しい。

転校を繰り返して、折角作った友人関係はすぐに脆く崩れ去る。忍足が覚えていても、相手は忍足のことを覚えていないということも実際あったらしい。(勿論あまり社交的ではない彼は、自分から話しかけるような真似はしなかったらしいが)だから彼は人間関係の築き方を間違えたまま覚えてしまったようだ。会った途端に別れることを考えるなんて不毛だと思わないのだろうか。思わないんだろうね、だってそれが既に当たり前だったから。

うだうだと語っているが、ようは俺はそんな忍足が何だかんだ言っても愛してるってことだ。不器用に育った彼を守ってやりたいし、ラブロマ映画を見て泣いてる彼のそばにいたい。(泣き顔は特に俺だけに見せていて欲しい。)何だか段々気持ち悪くなってきたけど、俺は忍足が好き。それだけのことだ。






「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -