短編 2 | ナノ

困惑と羨望

忍足とえろたり。

「ええか自分。抵抗すんのを諦めたらあかんねんで?スるんやったら互いに了承を得とかんと、その行為は『強姦』になってまうからな。気をつけぇよ、」

…ええと。何やろう急に。俺より色っぽい俺が、よう分からんけど俺に駄目出ししとるこの状況について誰か説明とかしてくれへんのやろうか。いや確かに諦め癖はついてまっとるけどな、でも何かおかしい気がするんは俺の気のせいやないよな?

「…えーっと、はい、ありがとうございます…。あの、で、何で急に?」
「自分ら見とるとよう思うねん。あれって訴えたら犯罪やんなぁって」
「は、犯罪!?そ、それはちゃう、と思いますが何と言えばええんか分からんのですけど…」
「知っとるよ。自分ら案外ラブラブやもんなぁ、口にせぇへんだけで。だからこれは俺の完璧なおせっかいなのはよう分かっとるんやけど、つい、なぁ?」

そう言って自嘲気味に笑う俺。いや俺は俺でも俺のことやないねん。あーどないしよ、呼び方決めとかなあかんかったな。じゃあ………あかん、思いつかへん。

「どないしたん自分。さっきからすごい顔しとるで」
「あ、すいません…」
「っちゅーか何で謝るん?あれは俺の助言であっておせっかいなんやから気にせんでええんよ?」
「いや、その…ちょっと頭混乱しとりまして…」
「…敬語口調なんは意味あるんか?」
「それは…何か、同い年には見えへんので…」

特に漂っとるフェロモン?ちゅーのがむんむんで、本気で年齢一緒には思われへん。あと妙に落ち着いとるとことか、すらすらと言葉が出てくるとことか、細部の動作が大人っぽいとことか?もうよう分からんくなってきた、ホンマどないしよう。俺はこないにはなれへんのやろうなぁ。だから毎回ジローにされるがままになって、結局ジローのしたいようにされるんかな。あ、別にひがんどる訳やないよ。これでも同意の上やよ。…うん、事後承諾やけどな。でもホンマに嫌やったらちゃんと言うし態度に出すからジローも分かってくれとる…はず、やよ多分。うん俺信じとるで。

「…俺が自分に言える事と言えば、正直一つくらいしかないんやけどな、」
「へ?」

俺によく似た俺っぽい人は、やや視線を俺からずらしてぽつりと呟く。何やろ、その声音が思ったよりもとっても優しくて、俺ってこの人に好かれとるんかなってふと思った。だって何か、子供心配しとる親みたいやったし。

「自分は自分の意思をしっかり持っとき。そうすればいざと言う時はっきりと言えるからな、『彼を愛しています』って。な?」

せやろ?と笑う姿は笑った俺によう似とったけれど、それでも『俺』ではないから俺はそんな風に笑う事はきっと出来ひんのやろうなぁって何となく思った。


→同じ人でも考え方や価値観が変われば表情も変わってくるよねっていう話。えろたりさんは忍足応援していそう。親子っぽい書き方をしてしまいましたが、どちらかと言うとえろたりさんが忍足に憧れてるんだと思います。








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