リミッターを超える
「そないまどろっこしいもんで、自分は満足するんか?」
彼の首筋に顔を寄せ、赤い傷跡を残し顔を離した時だった。それはまるで挑発で、催促のようでもあった。…いや、実際にそうなのだろう。感じるのならより強く感じていたいと彼は前に言っていた。キモチイイのも、痛いのも同じように。
「なぁ跡部、俺はもっと自分に強く欲しがってもらいたいねん。喉から手が出るほど欲しいって言葉があるやろ?そんな感じにな」
離れていた距離は、彼の手によって先程と同じように近付く。そして、今度は逆に彼が俺の首筋に顔を埋めた。柔らかな唇が触れたと思えば、その後当てられたのは硬い感触。多少の違和感を感じつつも拒む事はしなかった。
―突如感じたのは、熱と痛覚。そして、体温。彼は俺の首筋に、あろうことか歯を立てて皮膚を噛み千切ったのだった。人間の噛む力だけでは、普通は死んだりしないので大丈夫だとは思うが、それでも白いシーツに鮮血が滴り落ちる光景はあまり見ていて良い気はしない。彼は赤に濡れた唇を吊り上げ、満足そうに微笑んだ。
「なぁ跡部。自分はどれくらい俺が欲しいのん?教えてぇな、」
べろべろと意地汚く俺の傷口を舐めながら、忍足はそう囁いた。