愛と友情の交錯線
「侑士俺の事好き?」
不意にそう尋ねてきたのは、恋人でもなければ親でもなかった。
「なぁ侑士、侑士は俺のこと好きか?」
「…岳人、急にどないしたん」
「細かいことはいいからさ、なぁ侑士」
ダブルスパートナーの岳人は、俺の言葉を聞きたいようだけれど。よく考えればすぐに分かるはずだ。それをまた何で急に。
「好きやよ。それがどないしたん?」
答えは既に決まっている。嫌いなヤツの面倒が見られるほど、忍足は人が出来てはいなかった。だが岳人はその答えを聞いても、安堵しているようには見えない。ということは、だ。彼が本当に聞きたいのは、そこではないということ。つまり。
「…じゃあ、ジローと俺どっちが好き?」
じ、と見つめてくる大きな瞳。茶化している訳でないことは、目を見ればすぐに分かった。どっちが、なんて。聞き方が悪すぎる。
「…自分、一応聞くけど分かっとるよな」
「…うん、分かってる。分かってるけどさ…」
「つまり自分が聞きたいのは、『恋人』と『友人』どっちが好き?ってことでええんやな?」
「う、うん…そう、そうだけど…」
やや口ごもりながら、岳人は見つめていた目をあっちこっちへ向ける。何かあったのだろうか。いつもは結構自信過剰なところがあるのに。
ジローは俺の恋人である。そして、岳人の幼馴染でもある。期間的には逆に言った方が正しいのだろうが、まぁそれは置いといて。
「…言ったら岳人傷付くと思うけど」
「…分かってる。分かってんだよ本当は…。でも、」
「ジローに俺を奪われるんが怖い?それとも俺がジロー奪ったんが?」
多分どちらもだろう。大事な幼馴染を奪われたことも、大事な部活のパートナーを奪われたことも、どちらも彼にとっては負担なんだろう。分かっていたことではあるが、それを気にしていては付き合えないので仕方ないと思った。少なくとも、俺は。ジローは知らないけれど。
「…、」
「俺は岳人のことも慈郎のことも好きやよ。でもどちらがって言われたら、答えは一つしかないわ」
岳人は黙った。そうなると思った。だからあえて言葉にはしなかった。
→煮え切らない友情関係の話。侑士に会ったのは岳人の方が先なので、もしかしたら俺がジローの位置にいることも出来たのかなって考える、割とナイーブながっくんの話。