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糖度120%の恋人
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甘味は砂糖山盛り五杯分。つまりゲロ甘。摂取するには甘過ぎて、迂闊に手も舌も出せないような産物。正直言って食べるもんじゃない。あれは触れてはいけないものだ。体に悪すぎる。

はちみつ色の髪の毛と目を持つジローはきっと、舐めると甘いんだろう。赤ちゃんのようにぷにぷになほっぺたは美味しそうだけれど、先程も言った通り食べるものではないので口にしたら甘過ぎて胸焼けを催すに違いない。だから食べてはいけない。元より自分は甘いものが好きな訳ではないのだ。普通のはちみつでさえ甘ったるくて好かないというのに、こんなもの食べたら糖分過多で死んでしまう。死ぬのは嫌だ。まだ中学三年生なのに死にたくはない。

ただでさえ甘そうな外見だというのに、彼は甘いものをよく摂取している。生クリームで可愛くデコレーションされたどっかの有名なパティシエが作ったらしいケーキを俺の目の前でもぐもぐしている。見ているだけでもう既に胸焼けしている俺は本当に甘いものが苦手なんだなぁとしみじみ思いつつ、至福の笑みを浮かべる彼をじっと見つめた。

「…美味しい?」

明白なことを聞いた。答えは簡単に分かることだけれど、当たり前の返答が何故か無性に聞きたくなったので。

「うんっ!おいしーよ!」
「ほっか…」

これ以上甘くなってどうするつもりなのだろうか。それでも、甘くない彼は俺にとって彼ではないのでやはりこのままで良いのだろうとぼんやり思った。



 


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