お題小説 | ナノ


26薔薇
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「黄色いのもキレーなのにね、」

しゅん、と項垂れたジローの頭を優しく撫でる。きちんと棘の取ってあるたくさんの薔薇を抱き締めながら、ジローは悲しみを全面に押し出して言った。

黄色い薔薇はとても綺麗だが、贈呈用には向かない。何故なら黄色の薔薇の花言葉は『嫉妬』だからだ。他の色の薔薇はそうでもないが、黄色の薔薇の意味はあまりよろしくない。元より黄色い花の花言葉があまりよろしくないのである。黄色のチューリップもまたしかり。理由は確か弾圧時代の何とかと授業でやっていたが、朧気過ぎてあまり覚えていない。
ジローはビタミンカラーのオレンジが好きだ。だから薔薇を見ていた時も一番反応が良かったのは同系色の黄色だった。だから黄色の薔薇が欲しいと言い出して、喜んで黄色い薔薇を貰ったのはいいが庭園の管理をしているおじさんにちょっと色々言われたのでジローはちょっぴり元気がない。多分俺か俺の母親にでもあげる気だったんだろう。自分で愛でる分には問題ないはずだから。

「…まぁええやん。気に入ったんやろ?」
「でもおれ、ゆうちゃんにあげたかったのに…」
「やっぱりかい…」
「うん?」
「いや、何でもない。ええよ、貰ったろか?」
「え、でも…」

すっ、と一本薔薇を引き抜く。氷帝学園の薔薇園で作られた、美しい花。別に勝手に人がつけた花言葉を気にするほどの人間ではないし、大事なのは意味ではなく外見の美しさではなかろうか。愛でたいと思わせるほどの美しさ。あとは大切な人から貰った、というのも。

「…ええ匂いするなぁ、これ」
「…うん、」
「ありがとうな、じろちゃん」

ふわりと自然に笑顔になった。その瞬間を見たであろうジローは、沈んでいた表情をたちまちきらきらさせて嬉しそうに笑った。やっぱりジローは笑っとる方が可愛くて好きやなぁ。


→黄色い薔薇って綺麗なんですけど、花言葉の意味はあんまりよろしくなくて、でも黄色と言ったらジローかなと思って。ジローは自分の好きになったものを無条件にゆうちゃんにあげてるんだと思う。たくさん持ってますがこの後どうするんでしょうか。ジャムとか砂糖菓子とか、書く気ないのにちまちま考えてました。



 


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テーマ「人外ファンタジー」
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