お題小説 | ナノ


29噂
25/51

「セフレがいるって本当なんですか、」

淡々とした声音だったので、きっと彼は本気なのだろう。振り向けばやっぱり、彼は真剣な顔をしていた。真面目だなぁ、と思う。俺にはそんなこと、出来ない。本人に向かって直接そんなことは言えまい。内容が内容だけに。

「…そうやと言ったらどうするん?」

ネクタイを緩めながら尋ねた。嫌な笑みを浮かべつつ。すると彼は複雑そうな顔をして、やや口ごもる。本当に聞きたかったことではないのだろうか。それとも、あまりにショックで言葉が出ないか。確かに中学生でセフレがいるというのは異常だとは思うが。

「…お金持ちのおっさんから、金を貰っていたのもですか?」
「そうやねぇ、否定はせんよ」

―何やあれ見られとったんか。
あっけらかんとそう言えば、彼は眉間の皺をより一層深くした。別に金持ちって程あのおっさんはお金を持っていた訳ではないけれど、そのことをわざわざ訂正する必要は無いだろう。自分の金銭感覚と、他人の金銭感覚は違うのだから。

「…忍足さん…」
「何?幻滅したん?ええよ別に。俺には常識も何もあらへんのやから」

にっこり笑って言った言葉は、昔自分に浴びせられた言葉をそのまま引用した。もう諦めているから、せめて彼はそうならないことを願う。まぁ普通の人間は、俺みたいにはならないと思うが。

「日吉、あんま俺に近付いたらあかんよ。流れとる噂のほとんどが、真実やと思ってくれればええから」

だからもう、必要以上には近付くな、と牽制しておく。下手に足を突っ込まれても、困ってしまうから。



→最初から決めてた話。えろたりさんと日吉君。矢印なのかは分かりませんが、最初の頃のつっぱったえろたりさんです。


 


「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -