08寸止め8/51
「はいストップ、」
むぎゅ、と恋人の唇を指で制した忍足は、にこり笑ってそう言った。我慢の嫌いな恋人は、それはもうぷんすかと怒った。
「むむっ!!むーむー!んむむーっ!!!」
「堪忍なぁ、じろちゃん。でも今日はあかん。キスもセックスも無しな、」
「!!!!!!!」
「…自分喋ってもいないのにえらい分かりやすいなぁ…全部顔に出とるで」
「……、」
「あ、しょげとる」
調子に乗って恋人の唇を指でぷにぷにしながら、忍足はのほほんと恋人の表情を観察する。百面相かと思うほどに、慈郎の表情はコロコロと変わる。それが面白くて、忍足は恋人にわざと罪の無い嘘をつらつらと並べ始めた。
「明日からテストやから勉強しなあかんやんか、せやから今日はえろいことしたらあかんねんよ。だってシてもうたら自分は勉強せぇへんし、俺は勉強出来ひんやんか。な、慈郎も分かるやろ?俺ら一応中学生やから、学生はまず勉強せなな。それが俺たち学生の一番やらなあかんことやろう?」
勿論そんなものただの口実に過ぎないのだけれど。素直で純粋な、されど時に鋭い恋人さんは果たしてどんな返答をするのだろうか。いじっていた指をそっと離すと、恋人はすぐに言葉を紡いだ。
「学校のおべんきょーよりも、ゆうちゃんとふたりでオトナのおべんきょーした方がずっとしょーらいのためになるからいいもんっ!!」
ぼふん、と勢い良く抱き付いてきた恋人はそう言うと、忍足を座っていたソファに押し倒した。
(…やっぱり慈郎を止めるんは無理やったかぁ…。まぁ、分かっとったことやけどな)
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