お題小説 | ナノ


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「慈郎の欲しいもん全部あげる。俺があげられるもんなら何だってあげるわ。身体でも愛でも心でも何もかも、俺は慈郎のためなら渡せるし捧げられる。なぁ慈郎、自分は何が欲しい?」

ゆうちゃんの服の隙間に、するりと誘われたおれの手。冷たいゆうちゃんの手とは違って、ゆうちゃんの胸は温かかった。当たり前かもしれないけれど。
何でそんなに必死になって尋ねるのだろう。何でそんなに切羽詰ってるんだろう。何かあったのかな、何でそんなにゆうちゃんは泣きそうな顔でおれを見ているのかな。分かんないけど。おれはゆうちゃんじゃないから何一つ分からないけど。

「―ゆうちゃん、」

愛も心も確かに身体だって、おれは欲しい。『ゆうちゃん』を構成しているものすべてを、おれは欲していると思う。だってゆうちゃんが『すき』だから、ゆうちゃんがおれと同じくらい『すき』でいてくれたらとても嬉しいから。同じにはなれないけど、同じくらいならきっと。

「ゆうちゃんはおれにたくさんの『もの』を与えてくれているから、十分満ち足りてるよ。だから、むしろおれの方がゆうちゃんにたくさんあげたいな。愛とか心とか、ゆうちゃんを『すき』っていうキモチとか」

胸元に置いていた手を上に動かして、ゆうちゃんの頬にたどり着くと優しく撫でる。ゆうちゃん泣きそうだな、泣いちゃうかもな。でもそんなゆうちゃんもすきだからなぁ。
ゆうちゃんの目から溢れ出た雫を舌で掬いながら、またおれはゆうちゃんから貰ってしまったなぁなんて思いつつ。怖くないよって伝える為に、おれはそっとゆうちゃんの身体を抱き締めた。



(欲しいのは、体温)



 


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