お題小説 | ナノ


07はちみつ
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どろり。はちみつをかけたトーストにかぶりついたら、重力に逆らうことなく重い液体は真下に垂れ下がって落っこちた。ぼたり。あーあもったいないと思って、あとで指で掬おうと心に決めて、今はとりあえずトーストをかじる。今度はこぼさないように白い皿の上で食べることにした。

はちみつはあまくてどろどろしてて、のどにあまいのが引っかかる感じがするけどおれはとてもすきだ。だってあまいと美味しいもの。ゆうちゃんはあんまりすきじゃないのか、おれみたいにトーストにはちみつかけて食べないけど。美味しいのに。

「ゆうちゃぁん、」
「喋るんなら食べてからにしなさい」
「…ゆうちゃんおれのお母さんみたーい…」
「直々に言われとるからな、『慈郎をよろしくお願いします』って」
「むー…」

もぐもぐ。もぐもぐ。ゆうちゃんはトースト(マーガリン塗っただけ)かじりながらコーヒー(ブラック無糖)飲みながら新聞読んでる。…ゆうちゃん器用だなぁ。おれがやったら多分コーヒーこぼすと思う。あんまりコーヒー好きじゃないけど。だって苦いんだもん。

「じろちゃん、ミルク」
「あい」
「…このミルクにも蜂蜜入っとるのによくそんなん食えるなぁ」
「だって好きだもん。はちみつ」
「…俺より?」

たまにこうやって答えが一つしかない質問をしてくるよね、ゆうちゃんって。構わないけど。そういうとこかわいいし。

「もちろんゆうちゃんの方があまくて美味しくってだいすきだよ」
「俺は甘くもなければ美味しくもないけどな」
「夜のゆうちゃんはすっごく美味しいよ。どろどろで」
「それは余計やったな」
「そうかな?ゆうちゃんってはちみつみたいだよね」
「は?」
「きれいな色してるしー、あまいしー、食べると美味しいしー、どろどろだし?」
「それはあんまり嬉しないな」
「えー何で?あ、あとねぇ」
「ん?」

「おれはちみつもゆうちゃんもだいすきだから、残さず味わってぜーんぶ食べるよ」

やっとトーストを完食したので、机にこぼれてしまったはちみつを指で掬い取りながら、おれはにっこり笑ってゆうちゃんを見た。

→この話の元になったのは、違うお題サイト様(ひよこ屋)の『はちみつトースト』から。ジローがはちみつトースト頬張ってたら可愛いだろうなっていう妄想です。



 


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