お題小説 | ナノ


023センチ
2/51

「3センチ近付いたら触れちゃうんだって」

跡部が言っていた言葉を反復する慈郎。それは確かに聞いたことがあるが、こちらからすればだから何だという話だ。きょとんとまんまるな瞳がその答えを知っているとは思えなかったので、慈郎に何かを聞くことはしなかった。

「えっとね、あのね、おれとゆうちゃんってさ、じゅうはっせんちさでしょ?さんせんちじゃぜんぜん足りないね」
「そうやねぇ…」
「おれがじゅっせんちの台に乗って、あとはっせんち足りないから、その上からまたはっせんちの台の上に乗って…」
「それ危ないから止めとき。慈郎は落ちそうやから」

しいて言うなら岳人も落ちそうな気がするが、彼は自信のジャンプ力をフルに使ってそれを補おうとするだろう。そう考えると、岳人よりも慈郎の方が身長は高いが距離は遠いのかもしれないとか云々。ふと思考の海に沈みそうになっていた時、あることに気付いた。

「…俺と身長同じにしても何も変わらへんよ?」
「ふぇ?何で?」
「だって触ろうと思わな触れへんやん」

するりとやわらかい頬を撫でる。その手に生暖かい手が重なって、当たり前のように二人顔を近付けた。目を開けたまま、互いの唇に触れる。

「…こんな風に?」
「そうやな」
「…なるほど、」

本当に彼に意味が分かったかは不明だが、どことなく満足そうなのでまぁ良いかと思った。



 


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -