お題小説 | ナノ


36昨夜
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「もうさーゆうちゃんったら可愛いんだよ〜最初はあんまりノリ気じゃないのに、始まるとすっごいんだから!!」

会うなりまるでマシンガンのように慈郎が喋り出したのは、恋人との夜の営みについてである。覚醒している彼が話し出したのはあまり真っ昼間に喋るような内容ではなく、しかも大声で喋るので周りに筒抜けである。唯一の救いは、相手のことを『ゆうちゃん』と呼んでいるから周りには女だと思われていることくらいか。

「あっまーい声とか、どろっどろの目とか、きょーあくてきにえろいんだよ!」
「分かった、分かったから少しは小さい声で喋れよ…」
「だってちょーえろいんだもん!」

それでねーと嬉々として続きを語り出そうとした慈郎の頭に、やけに分厚い本がこつりと当たる。…いや、こつんなんて優しい音してなかったが。

「ジロー止めい。大声で話す内容やないやろ」
「えー何で!?昨日ちょー楽しかったから恋人いないがっくんにも教えてあげようと思ったのに!」
「余計なお世話だバカ!!」

自分が頭に本を当てられた訳でもないのに、頭を抱えたのは自分の方だった。微妙な優しさが逆に痛い。っつーか大声で俺が彼女いないことを叫ぶんじゃねぇよ。

「ごめんな、岳人。あとでしっかり言いつけるわ」
「良いよ別に…こいつの空気読めねぇのは今に始まったことじゃねぇから」
「そう言えば幼馴染みやったね」

微笑みながらそう言った侑士の表情が、昔よりも随分と柔らかくなっていることに気付いた。あと目元がちょっとだけ赤いこととか、若干声が掠れていることにも気付いたけれど、絶対に言わない。

「ゆうちゃん用事終わったの?終わったんならご飯食べよーよ、俺おなかすいたー」

じたばたと腕と足を動かして慈郎が言えば、侑士は仕方無い子やなぁと呟いて俺を見た。…何でも良いけど親子みたいだな、お前ら。

「岳人行こか」
「ん?あぁ、分かった」
「ごっはんだごっはんだー!!」

まるで嵐のように勢い良く立ち上がり、あっという間に走っていく慈郎。それを見ながら穏やかに微笑む侑士の隣で、まぁこういうのも良いかとぼんやり思った。

→がっくんがあまり良い位置にいませんが、これでも一応一番早くに結婚するのはがっくんだと思ってる。ジローの世話を焼くがっくんの図は見てて癒されるなぁと思いつつ、侑士ががっくんの世話を焼く姿もまた美味しいなぁと思っている今日この頃。ゆうちゃんの用事は図書館か本屋で、何でジローがごはんをせがんでいるかというと朝食を食べていないからです。書いてないからどっちでも良いけど一応大学生のイメージで書いてました。


 


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