お題小説 | ナノ


33息切れ
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床に散らばった青色。歪んだ顔を覗き込むと、ゆうちゃんはすごく嫌そうな顔をした。まるで自分が押し倒したみたいになった体勢のまま、互いに一歩も動けない。静寂の均衡を破ったのは。

「…じろちゃんええ子やから、はよどいて」

ぐ、と自由な手で反抗するゆうちゃん。でも本気でやってない。今のゆうちゃんの力では、おれは退かせない。知ってる。ゆうちゃんはおれが、ゆうちゃんにはひどいことをしないって思ってる。でも違うんだよ。しないんじゃなくて、出来ない訳でもなくてね。

「…じろちゃ、ぅわっ!」
「ゆうちゃんごめんね」
「何が、あっ!」

身体を起こそうとしてたゆうちゃんを、もう一度押し倒す。さっきのは不可抗力だったけど、今回は違う。おれが、したかったから、した。ゆうちゃんを冷たくて硬い床の上に縫い付けて、ゆうちゃんの白い首筋に舌を這わせる。ぎゅってゆうちゃんがおれの腕を掴んだけど、そんなんじゃ離さないよ。痛くないし、逃げてないから。
べろべろゆうちゃんの首筋を舐めて、何度も口付けて跡を残す。もう暑くなるからあんまり見えるところにしたらあかんよって言ってたけど、そんなのもう覚えてないフリでいっぱい赤い跡をつけた。そしたら何だか楽しくなって、もっともっとって欲張りたくなって。ちらりとゆうちゃんの顔を覗いたら、顔赤くしながらおれを睨んでたので見ないフリでやり過ごした。だってゆうちゃん、まだ気付いてないでしょう?おれがこれから何をするかなんて、考えてもないんでしょ?

「じろ、急にな、っん、」

怒られるのは嫌だから。ねぇゆうちゃんその気になって。そうしたらゆうちゃん怒らないでしょ?だからなって、はやく堕ちて来て。無駄に熱い舌で、逆に冷たいゆうちゃんの口内を蹂躙する。ゆうちゃんが中途半端に口開けてるから、ぐちゅぐちゅ水音みたいなのが部屋中に響いてる。おれは良いけどゆうちゃんはどうなんだろう。ゆうちゃんの口の端を伝う透明な液体は、あとでおれが舐め取っておこう。そう思いながら、いつもより荒くて苦しいキスをする。

時間なんて覚えてない。ゆうちゃんだけしか見てないから、時計も何も見てはいない。どれくらいしてたかなんて、おれに言われても分からない。でも、すごく長かったか短かったかのどちらかだ。楽しいことしてると時間ってあっという間に過ぎていくでしょう?そんな感じ。ゆうちゃんが限界を感じて激しく抵抗したので、おれは口を離した。ぜぇぜぇ口で息してるゆうちゃんの濡れた口元を舌でぺろぺろ舐め取った。ゆうちゃんは息するのに夢中で、おれに何か言うことは無かった。ただ、顔が赤くて息切れしてて、多分酸素不足で意識が朦朧としてる。それに気付いたら、おれはもうゆうちゃんの息が整うのを待ちはしなかった。

「…ごめんね、」

おれは自分の服を脱いで、ゆうちゃんの下に敷いてやった。それだけでは何も変わらないけど、ゆうちゃんよくベッドのシーツをぎゅって握ってるからその代わりになればいいと思った。肩を揺らして息をするゆうちゃんは、濡れた瞳でおれを見つめている。多分やる事は分かってる。そんなに鈍い人じゃないから。
これからする行為は、ゆうちゃんにとっては『強姦』とかいうものになるのだろうか。ふと思ったけど、もしそうだと仮に言われたって言われなくたって、これからやることに変わりはないのなら考えるだけ無駄だと思う。一度目を閉じて、もう一度開くと頭の中がすっきりした。おれの目に留まったのは、いつもどきどきしてたまらないゆうちゃんの顔だったから。




 


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テーマ「人外ファンタジー」
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