所謂私の危機的状況
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懺滅様より拝借
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貧しいながらも、毎晩毎晩勉強を積み重ね何とか女官の地位で働けるようになった。毎日の仕事はとても大変で、文字と文字のにらめっこに疲れ発狂しかけた事もあった。だが、その度に貧しかった生活を思い出し心に鞭を打つ。笑顔を絶やさずにひたすら仕事に明け暮れて居た。
そんな私もこの城を出入りする武将の方に顔を覚えて貰い、無理するなよと声を掛けて貰えるまでになった。すれ違う人皆顔見知りで、笑顔で挨拶をする。

その中に一人困った人が居た。軍神関羽殿の息子、関索殿です。


「あ、名前っ君に会えるなんて今日は運が良い」

「関索殿…こんにちは、では私はこれで」

挨拶もよそにすれ違い様、そのまま逃げようとした名前だったが関索に手を掴まれてしまった。今日も今日とて厄日らしい。名前は内心で神様を恨んだ。


「所で…先程兄上と何か話してたようだが」

「はい、星彩殿が体調不良だと聞いたので」

嘘偽りも無く真実を口にしている。だが関索は納得が行かないようで、掴んだ名前の手をやわやわと握りながら目で本当に?と訴えてくる。
まるで嫉妬する恋人のようだが、残念ながら恋人関係を結んでは居ない。

いつからだろうか、始めはただ笑顔で挨拶を交わしていただけの関係だったと言うのに、気付けば近くに居るとこれでもかと目線が交じるようになり。
次第に関索との会話が狂ってきてしまった。

「星彩殿に直接会いに行けば良いのに…君はとても美しいから歩くだけで男が惑わされてしまう」

「それはありませんね」

はっきりと言おう。仕事に疲れ、髪も邪魔にならない程度に結い肌も不健康に青白い女にどこの男が惑わされるのか。そんな男が居るのなら是非とも紹介して欲しい物だ。
名前は呆れた様子で前髪をいじった。この前髪も切るのが面倒だからと随分伸ばしたままになっている。

「君が私だけを見てくれたら、私は毎日幸せなのに」

「関索殿ばかり見ていたら仕事が出来ません」

「名前は照れ屋さんだね…だから私も皆も必死になる」


一体何に必死になって居るのか、聞き返してみれば関索は驚いた様子を見せたかと思うと、次には何か考え始めてしまった。
こうして関索と噛み合うようで噛み合わない会話をするのが、名前は苦痛で仕方無いのだ。何故普通に会話をして居るのに噛み合わないのか、理解出来ないのか。
なるべく人の少ない道を歩いて居るにも関わらず、関索とは見事計算されてるかのように遭遇してしまう。会話がもう少し噛み合って居たのなら、悩みにもならなかっただろうに。


「君と言う人は…本当に可愛い人だね、他の男には渡したくない」

「関索殿?」

急に真面目な顔つきになり関索は名前の頬をそっと撫でると愛おしそうに見つめた。

やっぱり会話が噛み合わない。


所謂私の危機的状況

(星彩殿やっぱり関索殿はおかしいです)
(名前…もしかして鈍感?)
(鈍感とは?)
(……関索、頑張って)
(星彩殿?)


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