ふしだらな巣窟
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告別様より拝借
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もうじきに日が沈もうとしてる。薄暗い闇が輝きを飲み込みながら、静かに室に灯された明かりに二人の顔がぼんやりと浮かぶ。

「そろそろ膝からどいてくれませんか?」

苛立ちを孕んだ声に、名前は陸遜の膝から俯せていた顔をゆっくりと上げる。
数刻前いきなりやって来たかと思ったら、一息ついて椅子で休んでた陸遜の膝で泣き出した。何があったのか問うても、答えない為ほっといた結果がこれである。もうすっかり辺りは闇に飲まれて行ってしまった。

「こうすると、嫌な事も忘れられるの」

「お陰で私は残りの仕事をやり損ねてしまいました」

盛大に溜息を吐きながら陸遜は名前の頭を軽く叩いた。こんな風に出来るのも幼い頃からお互いを知って居るからだろう。無理矢理名前の体を剥がして仕事に戻る事も出来たのだが昔からの癖か、どうも無下に出来ないのである。
涙もすっかり引いたようで、陸遜の膝に頬を寄せながら楽し気に名前は笑う。
少なくともここは陸遜の室で、二人以外誰も居ない。この時間になると訪ねる人も居なくなってしまう。無自覚な笑顔に陸遜の苛立ちは募って行く。

「あなた…わかって居るのですか?」

「幼馴染でしょ?何の間違いが起きるの」

その言葉を聞いて、陸遜は頭に血が一気にのぼっていく感覚を覚えた。
それを理解しててまだ居座ろうと言うのか。幼馴染とは言え、男と女である。
陸遜は苛立つ熱に浮かされ、力強く名前の手首を掴んで力任せに引き寄せると、その弱々しい体は簡単に陸遜の腕の中に飛び込んできた。

「ちょっと!陸遜っ」

「怒るのは筋違いですよ、幼馴染でも間違いは起こります」

腕の中でもがく体を締め付けながら、陸遜は不敵に笑みを浮かべて見せた。それと同時に、お互いの成長を思い知る。

「さぁ名前、どんな策を練りますか?」

「ふざけないで…離してよ」

嫌だと言ったら?
意地の悪い言葉を耳元に幼い頃の感覚のまま陸遜に甘えてしまった事を激しく後悔した。がっちりとした男の体に拘束されて、足先も今のバランスを保つのが精一杯の名前は抵抗を辞めそのまま陸遜に委ねる。
大きな溜息が耳元を掠めて行った。


ふしだらな巣窟

(そろそろお互い大人になりましょう)
(早く甘えられる人を探せば良いんでしょ)
(へぇ…そんな事言うんですか)


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