つねる、なでる、さわる
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クロエ様より拝借
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本日、忙しく太陽の陽気を眺める時間無し。馬超殿に押し付けられた書物のおかげ。これでもかと積まれた書物を良くもまあ一人の軍師見習いに押し付けられたものだ、馬超殿の忙しいには困ったものだ。かと言ってたかが軍師見習いの自分が断る訳には行かないのだ、笑顔ではいと一つ返事。
選択肢は選ぶ程残されては居ない。

名前は頭を抱えながら目の前に広げた書物をじっと眺めた。馬超殿の持ってくる書物は簡単に終わらせる事が出来る物ばかりだが、その量は計り知れない。毎日の鍛錬、そして見回りになど行けばそれはそれは忙しく時間など書物に使えないだろう。分かっては居るものの、こうして眺めると気が滅入ってくるものだ。

「はぁ…頭が痛い」

最近、馬超殿に呼び止められる度に頭が痛くなる。それはこうして別れて一人になってから酷くなる。


風が優しく名前の髪を揺らした。その穏やかな冷たさに瞼を下ろす。


「ふむ…これは、酷い」


「………劉禅様」

沢山積まれた書物の端から顔を覗かせた劉禅。本当ならばこんな所には居てはいけない人。名前は再び頭を抱え、大きくため息を吐いた。
何故ここに?それはもう沢山聞き過ぎて今更だ。

「馬超殿は、本当に名前を可愛がって居るな」

「だと良いのですが…それよりも劉禅様、こんな所に居てはなりません」

名前が納得出来ないのは、こんなしがない軍師見習いの部屋に居る事とこうして書物を押し付けられた時にやって来る事だ。何もこんな忙しい時にやって来なくても良いだろうに。とは言え出て行けとは言えない。
名前は仕方無くいつものように筆を走らせる。劉禅は名前の隣に椅子を用いり、その姿を眺めていた。
さらさらと筆が流れる音だけが聞こえる静かな一時。これなら順調に仕事も終わると、内心ほっとしているとふと頬に触れようとする指先が視界に入り込んだ。困った様子で劉禅を見やれば、その指先は慌てて引っ込む。

「触れては、ダメなのか…?」

「仕事の邪魔になります」

「名前は…厳しいな」


もはや厳しいとかの問題ではない、この積み上がった書物が見えないのだろうか。これでも他にも仕事がある身なのだ、早く終わらせたい。
だがこれしきの言葉で理解してくれてたら、今ここに劉禅は居ない。

引っ込めたはずの指先を、再び名前の頬に伸ばすとつんと指で摘みくいくいと引っ張る。口元の違和感に角でも生えそうなのだが、強く我慢して筆を走らせる事に集中した。


「そうだ…私も名前に仕事を頼もう」

「真っ平御免です!!」

勢い良く振り向くと、劉禅の指先から弾かれた頬がじんじんと痛んだ。だがそんな事よりも、本音で怒鳴ってしまい名前の顔がみるみる青くなって行った。こんななりでも時期国を背負う方、こんな地位も名誉も無い一人が生意気を口にしたのだ名前は今生きた心地を感じていない。

そんな名前をよそに劉禅は先程まで摘んでいた頬が気になって仕方無い様子。すまない、と一言こぼしながらその頬に優しく触れた。

「名前が馬超殿と、仲良さそうにしていたから…つい」

いじめてしまった。
狐に摘まれたように拍子抜けした名前は、目を丸くしたままただ劉禅に頬を撫でられていた。そして徐々に事の次第を納得すると、急に気恥ずかしくなり俯く。

「名前は、可愛いな…」


「りゅ…劉禅様っ早くお部屋にお戻り下さいっ」

情けない声を吐き出すも、劉禅はにこにこと笑みを浮かべているだけで一歩たりとも動く様子を見せない。
そう、この劉禅と言う男はこんな人間だ。一言二言口にした所で全く動じない。自由なのだ。自分がこうしたいからこうする、誰かに言われたから退散するなど選択しない。

名前は真っ赤になりながら頭を抱える。


つねる、なでる、さわる

(名前すまなかったなっ礼に肉まんでも)
(っ馬超殿…っ!!!!)
(なっ……取り込み中だったか!すまないっ)
(馬超殿っ勘違いしないで下さい!!)
(勘違い…?今は、そう取り込み中だ)
(劉禅様っっ)


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