天然ドラマチック
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クロエ様より拝借
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日差しの暑さに玉の様な汗が額から流れて行く。衣服さえ体にだらしなく張り付いて、気を引き締めて居るのが馬鹿らしくなる。
そんな暑さの中神の救いで、張苞達に誘われ川へ遊びに来ていた。
山から下る水は殊の外冷たく、あれ程暑さに項垂れて居たのが嘘のよう。
名前は軽装になり膝までの深さに喜んで跳びはねた。

「石に気を付けろよ?怪我したら俺が怒られるんだぜ?」

「そしたら皆で怒られよう…」

関興の言葉で張苞と顔を見合わせて笑う。三人揃って謝った所で、結果的に張苞が叱られるだろう。面倒を見る立場と言うのは大変なのだろう、手のひらで水を掬いながら思う。

「名前、ここに魚が居る…」

石と石の隙間を指差す関興に、面白がって捕まえてと言うと獲物を狙う様に目を細めて真剣な面持ちで姿勢を低くする。
そんな二人を少し離れた場所で眺める張苞は満足そうに小さく笑った。

キラキラ光る水面に掌より小さい魚が右往左往して、水に沈んだ太い指がそれを静かに狙ってた。

「捕まえたら食べようね、関興っ」
「そうだな、張苞に火を起こしてもらおう」

小声でする会話に自然と関興の近くまで歩み寄る。名前の手のひらでは到底掴めそうにない程、魚は忙しなく動き回って居た。
戦乱の時代には不釣り合いな、穏やかな時間。

暫くして関興は両手に魚を握り冷たい水から引き上げた。指の間で動き回る魚に、何も持たない名前は慌てて魚を入れられる物を探す。
辺りを見回した所で手頃な物も無く、遠くで張苞が急いで大きな葉を調達しようと動き出した頃だった。

「魚がっ…関興離しちゃダメっ」

そう口にして、足元の苔に滑り名前の体は傾く。小さな悲鳴を上げた瞬間、関興の握る魚は玉の水を上げながら宙を舞う。太陽に照らされながら。
細い腕をすかさず掴んだ関興は名前を抱き寄せた。

ここで、踏ん張る事が出来てたら格好良かったのかもしれない。だが、突然の事に対処出来ないのはまだ未熟な証拠なのだろう。

「だっ大丈夫か!」

腰まで水に浸かった二人は突然の現状に返事を返せないで居た。腰まで浸かると足では感じられなかった驚く程の冷たさ。

一番に冷たいと思った、でも関興が居なかったら。それを考えると濡れただけで済んで良かったと思う。川の石は以外と切れたりするのだから。

「あ、有難う…関興」

「あぁ、名前が無事で良かった」

ほっとした様子で顔を覗き込むと、名前は関興の腕の中で真っ赤になって居た。年頃の男女が抱き合って居れば当然の反応だが、どうも関興は良く理解していようで。

「か、関興?あの…そろそろ」

下半身は痛い程冷たいのに、顔ばかり熱くて仕方ない。


天然ドラマチック

(関興、いつまで名前抱き締めてんだよ)
(手を離したら、流されるかもしれない)
(…そこまで流れ無いだろ)


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