うたかたをあげる
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クロエ様より拝借
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良く耳にしてるのは、やれ誰々の女官は胸が大きかった、屋台の娘が好みの胸だった、そんな下世話な話題ばかり。男の性と言ったらそれでお終いな気がして、その話題に切り替わると名前は不快感を露わにした。暫し無言になる一瞬、すると甘寧は名前をじっと見つめた。

「着痩せするのか?それにしても粗末な胸だな」

「うるさい…殺されたいの?」

やっと静かになったと思ったら観察をしていたのか、呆れたように肩を落とした。男の世界に飛び込んだ限り、我慢も必要だしある程度の扱いにも従ってきたが。

流石に下世話な話題に飛び込む程女を捨てた訳でも無ければ、神経が太い訳でも無い。それしか話題が無いなら黙っていて欲しいのだが。
名前は自身の愛刀を手入れしながら思う。

「なぁっちょっと触らせろよ」

「本当に殺されたいのっ?」

「んだよ…」

つまらなそうに甘寧がそっぽを向いた。

何の為に男に興味が無い素振りで生きてきたと思っているのか。戦いの世界では、女はあまりにも弱い。立場さえ危うい中、押さえつけられれば適うはずがないのだ。名前はそんな弱い女にはなりたくない。
生きていく為には、自分で自分を守るしか道はない。
下世話な話に付き合ってなどいられるものか。

「面白くねぇ」

「甘寧、そんな事ばかり言っていると男を落とすよ」


これでも戦では勇猛な働きをしている甘寧は、力の無い女達には非常に人気がある。守って欲しい、そんな素晴らしい株を持っていると言うのに。
口を開けばこんなだから、どうしようもない。

黄色い声を上げる彼女達が見たら何て思うだろうか、出来れば彼女達にはこんな姿を見せたくない。


愛刀の手入れも飽きたように、床に転がった姿を見て溜め息を吐く。本当にどうしようもない人だ、名前は床に愛刀を沈めると寝転んだ甘寧の顔を覗き込む。


「…そんな事してて良いの?」

「あぁ?もう終わったんだよ」

終わったも何もまだ何もしていないではないか。名前は離れた所に転がった武器を見て可哀想に思った。
そして再び甘寧に視線を戻すと、何故か不満そうにこちらを見つめていた。


「はぁ………今私が口づけたらどうなるのかな?」

「なっ」

挑発めいた口振りでそう言うと案の定、その目が大きく見開かれた。
甘寧には悪いが、何故甘寧が下世話な話ばかりするのか名前はそれを知っている。知ってても尚、気付かないふりをしていた。そう簡単に落ちる程、優しい女では無いからだ。

名前はしてやったりと言った表情で再び愛刀に手を伸ばすと可愛がるように優しい手つきで手入れを始めた。


うたかたをあげる

(あんたを見ると甘寧が残念に思えるよ)
(可愛がってあげてるんだけどな)


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