悲しい黒。
リヴァイの瞳はそういう色。私にはそう見えてしまう。殊更、壁外調査から戻ってきたばかりの、ベッドに倒れこむ、リヴァイの瞳は。
雨が降っている。
リヴァイの大嫌いな雨が。
「リヴァイ」
「着替えなよ」
「風邪ひいちゃうよ」
返事は、なく。呼吸だけがこの部屋を満たしている。色々と考えていることがあるのだと思う。兵長という地位ゆえに、すべて一人で抱え込んで。リヴァイは強い。とても強い。巨人に刃向かえる力がある。でも誰しもがそれを持ってるわけじゃない。壁外調査の度に、リヴァイだけを残し、部下が消えていく___仕舞いには、もう、一人だ。彼は。
感情に身を任せるなというのが調査兵団の鉄則だ。
遠くを見越さなくてはならない。
極端な話、私を殺せば、私と同等の力を持つ兵士が3人ほど入団するとしたら、
リヴァイは私を殺さなくてはならないのだ。
「明日私たちはどうなってるかな」
「……そんなこと、もう、考えねぇよ」
泣き顔を両腕で隠して、弱さも全部放り投げて。
「彼のこと忘れちゃうの?」
最後まで貴方の名前を叫び続けた彼を。
「……もう、忘れた」
掠れた声で。
忘れなければ、生きていけないのだ。死んでいった彼らを思って、泣くことは、許されないから。情を持ってはいけないから。魂を見送ったら、もう、そこで、リヴァイの中では終わる。でなければ、今日みたいに。
「忘れたんだ……昔のことは」
涙で罪を洗うのだ。
( 20110108 )