それからしばらく静寂があった。俺は慌てて呟いた。

「悪い譲ちゃん、今の忘れてくれ。今のはナシだ。なっ」

 シズカは呆然としたまましばらく止まっていたが、
ケラケラ笑った。薄っすら目尻に水滴が浮かんでいた。


「ラムダさんって本当に面白い人。
ラムダみたいな面白い人と、もっと早く出会えれば良かった!
私ラムダさんとお喋り出来るなら世界が病院で良いや。雪だって降らなくて良い、ただ、もう少しだけ生きたかったなぁ」

「なに言ってんだ、まだ生きてるだろ」と笑いながら言うと、そうですね、と笑顔が返ってきた。

「じゃあ、また明日。そうさな…雪は俺が降らせてやるよ、今度」
「嘘、そんなことできるわけないです」
「言ったな? よし、絶対降らせてやるよ。絶対」
「じゃあ約束ですよ。私に雪を触らせてくださいね」




 会社に戻って、今進めている計画…干害で困っている地域の農家に向け、雨を人工的に降らせる機械の開発をすぐに進めた。いきなり熱心になった俺にアテナが酷く驚いたのを覚えている。これが完成して、応用すれば、雪だって人工的に降らすことが出来るだろう。


「急に熱心ね、ラムダ」
「いや、ちょっとな……ところでこの機械は、応用次第で雪だって降らせられるよなぁ?」
「…ひょっとして、いつも貴方が通ってるコガネ医療センターのあの子の為かしら?」
「……おい、なんであいつを知ってるんだ」
「あら、あたくしの情報網を舐めないで頂戴」

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