「ああ…寒いですね。今年もこの季節がやってきてしまいましたか」
 
 ブルリと震えた仕立ての良い高そうなコートを一瞥してから、息を吐くと確かに真白なものに姿を変えた。
 灰色に近い空を見上げて、荷物を持っていない右手を右ポケットに手を突っ込めば温もりを感じる。そして思い出した。

 この道で振り返るあいつの姿を。


「ランスもとんだ失態をしたものですよ。研究所での爆破、なんて。わざわざ私が見舞いなんて全く……

ラムダ、どうかしたのですか」
「いや、別に。早く帰ろうぜ、アポロ。ランスのこたぁまぁしゃーない、失敗は成功のもとって言うだろ」
「……まぁ、そのとおりですが。とにかく早く本社へ戻りますよ」


 本当に寒いのが苦手なのだと分かるような早歩きをこっそり笑ってから、後ろを追う。



「ああ…アポロ、悪い、先に戻っててくれ」
「どうしたんですか、急に」
「ちょっとな、用を思い出した」
「…その試作品で遊んだりしないでくださいよ」
「しねぇよ、んなこたぁ」




___季節は、巡るものです。だからきっといつか、ラムダさんが私との約束を果たしてくれるって、信じています。

貴方に出会えて本当に良かった。


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