「寒いですね」
「そうですね、もう冬のようです。体調管理は大丈夫ですか、シズカ様」
「様はもう止めてくださいよ。私たちもう上司と部下じゃないんですから。アポロさん」
「では……貴方も是非その敬語を抜いて欲しいものです。その呼び方もね。シズカ」


 ロケット団が解散して三年が立ち、再びロケット団は解散した。奇遇なことにまた三年前と同じく、たった一人の子供に。
 あの時……私がモンスターボールを持って闘っていたら、なにかが変わっていたのだろうか。負けるのが怖くて、自分が落ちたらもう全てがなくなるのだと思って、私はあの椅子から立ち上がらなかった。結局自分のポケモンを信じきれない私なんかが、勝てるはずはないのだけれど。それでもなにかが違ったのかも、しれない。

 ポケモンはトレーナーの心を敏感に察知すると言うけれど、それに従うようにボールがカタカタ揺れだした。「出たがっているのでは?」アポロさんがそう言うので、ボールから出してやると、グレイシアは甘えたように擦り寄ってきた。小さく鳴いた。
 ベンチを立ったアポロさんが、

「暖かいものを買ってきます。待っていてください、」

 行ってしまった。グレイシアを膝の上に乗せると膝が凍りつきそうになった。刺す様な、冷たさだ。きゅうと膝を寄せるとグレイシアは降りてベンチの下で身体を丸めた。


 急にふわりと暖かいものが身体にかけられた。




「すみません、お待たせしました。」

「どうぞ、」とココアを手渡されて、手の中の温度が急速に上がっていった。暖かいな。 かけられたものはアポロさんのコートだった(それはもう勿論、アポロさんの為に作られたんじゃないかってほどオシャレなやつだ)慌ててアポロさんを見るとコートを脱いだわけなんだから薄いスーツのみだ。

「アポロさん、風邪をひいてしまいます!」

 コートを返そうとすると、「身体が冷えていますよ?」アポロさんの暖かい手(きっと缶コーヒーであたたまったんだと思う)が私の頬に触れた。急速に、身体の温度が上昇。赤くなっていく感覚。それでもコートを突っ返した手は変わらなかった。

「では一緒に使いましょうか」アポロさんは困ったように笑うとまず自分がコートを羽織り、私の身体を引き寄せて、私にもコートの半分をかけた。


「冬は寒くて苦手だったんですが」
「そうなんですか?」
「こんな風にお前と過ごせるなら悪いものではありませんね」


( 吐く息は白息であれ、)



11.20( 0530移転 )
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