ドアを叩く音がした。

「どうぞ」言うと優美に入ってきたのはアポロさん。だがそれに反して顔色は悪かった。一言にして、憂い。ああそうですか。やっぱり邪魔されたんですね。駄目だったんですね。
「もうしわけ、ありません、シズカ様」頭を深く下げたアポロさんはゆっくり呟いた。


「負けたんですよね。」
「……はい。あんな…小さな子供に、」
「アポロさん、私は、」

 アポロさんにソファに座るように促し、コーヒーをカップに注いだ。コポコポ音がして、アポロさんが好みの濃い目のブラックをソファテーブルに置いた。私も先ほどまで飲んでいたミルクティーを持ってアポロさんの隣に腰掛けた。

「私はサカキ様の為にロケット団を復活させるべきだと思ってたんです」
「シズカ様、私だってそのように考えて来ました……今だってそうです」
「そうですね。それでみんなやってきましたよね」
「……シズカ様?」
「ねぇアポロさん。私たちがどれだけ頑張ってロケット団を再び世に知らしめても、サカキ様はもう、ロケット団を解散させたんです」
「まさか……シズカ、様」


 アポロさんは全てをもう分かったようだった。

 私だってもう泣きそうだ。


「もう、やめましょう?」



 言ってしまえば簡単なことだったのに、私はどれだけこの言葉を言えずにいたんだろう。見えてはいた。分かってはいた。サカキ様はきてくださらない。こんなの私の独りよがりに過ぎないと思っていた。でもアポロさんは賛同してくれた。彼のおかげでまた団員が集まり、力を合わせた。けれど突然現われた子供のトレーナーに、始まりはヤドンの井戸から帰ってきたランスさんの報告で。まるで三年前と同じじゃないか。レッドという少年によって壊滅させられた三年前。まさか、同じように、そう不安になった私の背を押してくれたのもアポロさんで。

 ボロボロ零れてくる涙をアポロさんは掬ってくれた。



「そんな風に言われれば、私はもうなにも言えません。

…そもそも、貴方の言葉には逆らえませんよ。」
「ごめんなさい……っく、ごめんなっさ、い。アポロさっ、んごめんなさい……!」
「泣かないでください。シズカ様。惚れた方に泣かれるのは辛いものです」

 驚いて顔を上げると珍しく笑っているアポロさんがいた。


「ロケット団が無くなっても…私が幹部でなくなっても…お傍に居ても、よろしいですか。シズカ様」



11.15( 0530移転 )
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