屋根はひしゃげて、潰されていた。そこに戻ってきたときには既にもう__遅すぎていた。誰も居ない。積み重なった木片の中に僅かに垣間見える面影。ぎしぎしと揺らしていた白い椅子。ただしアイツ自身は見つからない。なぜならもう、

『__は飲み込まれて、それでも尚私たちに逃げるように叫んで』
『私たちはなにも出来なくて、ただ、逃げるしか』

『リヴァイさん、お願いです……どうか、どうかあの子の敵を、』

 俺がもう少し早く到着していれば、アイツを飲み込んだ巨人を斬っていれば、アイツは死ななかった。いなくならなかった。俺のせいでもうアイツはこの世にいない、名前を呼んでくれる声もない。


『リヴァイさん、どうか、リヴァイさん、リヴァイ、さん、

 ____リヴァイ、どうして来てくれなかったの』


「っ、!!!」

 カーテンの隙間から差している光が薄暗い部屋を照らして、動機が止まらなかった。汗を掻いている。嫌な夢を見たものだ。暗闇から血塗れになったアイツが手を伸ばして、名前を呼んで_流石に精神的に詰め寄られたのか、未だに肩が上下する。
 それでもベッドから出て顔を洗えば、いつもの自分に戻れた気がした。

 今日もまた、壁外へ出ることになる。廃墟を飛び回って、路を造る。ふとシズカのことを思い出した。前に叱って以来会話もなく、淡々と仕事をこなしているように見える。
 頼むから無茶をしないでくれ、と。
 アイツと同じ姿で、死に飛び込むようなことをしないでくれ、と。
 そう願ってもそれは全部裏目に出る。そもそもこんなことを考えてしまうのは、部下を平等に考えられていないということだ。そんな上司の下に、就きたいとは__思わないだろう。

( 201100527 )
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