まさかいやそんな馬鹿な、私の兄は変人、常識をひっくり返すのが特技だと胸をはれるほどの人だと思っていたけれど、ここまで奇天烈とは。
「シズカ、入れ」
手招きされ、足を踏み入れたその先には___海軍大将、仏のセンゴク……鷹の目、ミホークにゲッコー・モリア、他、と蒼々たるメンツ…海軍の重役と、王下七武海の皆さんがおそろいだった。
「誰だ………この小娘は」
いやこっちの台詞ですよ……一介の小娘が入ってきて良い場所じゃないよここ……。
なんとも言えない、視線を浴びる。
威圧感に後ずさり、部屋から出ようとすると、背中に、ドンッ、と何かが当たった。
「あらららら……なんだいこのお嬢さんは……」
……思いたくないが。
私は、ちょうど部屋に入ってきた、あの大将青雉に、ぶつかった、みたいだ。
冷たい。間違いない。やばい。私、死ぬ。死ぬ前に、プッチの名店『サン=マルティン』のシュークリーム、食べたかったな……何かが遠のくのを感じた私は、一歩手前で、現実に戻された。
「フッフッフ…!! フッフッフッフ……!! シズカ、そう青くなるんじゃねェよ……なァに大丈夫だ、今日お前をここに連れてきたのは、可愛い妹がこのオレに隠してることを確かめに来たんだよ」
耳元に冷たく囁かれた兄の声に、今度こそ私は死ぬんだ、と二度目の走馬灯。そこで、背後から声がした。ポン、と手を叩く音と共に。
「お嬢さん、ここらじゃ有名な、賞金稼ぎじゃないの。ドフラミンゴの妹、だって? あららら……そりゃあびっくりだァ」
それはもう、決定的だった。
兄が口角を上げる。
私は真後ろの男_最早大将であろうとも敬えまい_に舌打ちをかましたくなる。
「さァシズカチャン、洗いざらい吐いてもらおうか?」
(続く…?)