華美に着飾ることを、私はあまり好まない。それは俗に言う反面教師ってやつで、非合法的でトラブルしか持ち込まない私の兄は、何より見た目も派手だった。私は服なんて身を守るものの一つくらいにしか思っていなくて、兄から贈られるプレゼントたちには、その後ろに非合法の犠牲になった人影が見えるようで、開封すらしたことがない。

 海軍本部、エニエス・ロビーに近い、このセントポプラを選んだのもまた、一人暮らしに兄を納得させるため、である。つくづく私の人生は、兄によって縛られる。

 不幸な星の下になんとやら、とそこまでは思わないけれど、もう少しまともな、そう、ま と も な兄が欲しかったな、というのが本音である。


 ところで今日、唐突に私が、未開封だった、装飾まで派手なプレゼントをあさり、引っ掻き回しているのは、兄からの横暴かつ突然な呼び出しのためだった。


『フッフッフ……なァシズカ、このオレも一応オシゴトしてるんだ……エニエス・ロビーに向かうんだが、お前とも久しぶりに会いたい。ということで、3日後にセントポプラの海列車の駅だ…良いな? あァそうだ、服は…ルーベルチュールの白いワンピースがあっただろう。あれがいい。めかしこんでこいよ、フッフッフ……』


 じゃあな、と一方的に切られたその電話に、分かりきっていることだが拒否権はない。職場に頭を下げて休みをもぎとった私の苦労なんて、これっぽっちも知らないであろう兄の笑い声を思い出すと、腹がたってくる。
 おまけに、服装の指示まで出してきた。

 兄にとっては覚えがあるルーベルチュール_世界的に有名な、超高級ブランドだ_のワンピースも、私には開けられもせず物置にしまい込まれているうちの1つであり、そして兄に逆らうと良いことはない、という私の人生の教訓から、私は現在進行形で、まるで泥棒のように我が家を荒らしているわけだ。


「あ、った……よかった……」


 探し始めて数時間、ルーベルチュール、と力強く刻まれた箱の中にあった、兄のチョイスにしては珍しい、シンプルなワンピース。
 そういえば、今まで出てきた服も、そこまで派手じゃなかった。むしろ私が好むような、シンプルなものばかりで。

 白いワンピースはさすが高級ブランドなだけあって、着心地が良かった。めかしこんでこい、と言われたので少しだけ張り切ろうかな。明日のことを思い、早めに床に着いた。



(続く)
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