書類と睨めっこしている兵長の手元にカップを置くと、こちらを気にすることもなく一気飲みをされた。というのも今は夜中で、リヴァイ兵長は残業をしているから。疲れた脳には甘いものが一番_特にリヴァイ兵長においては_と考えた私は、コーヒーではなくココアを選択したのだけれど、それは正解だったらしい。

「少し休んだらどうですか?」
「…………そうだな」

 たっぷりの間を持って、書類は机の上に投げられた。空になったカップはじろりと睨まれて、有無を言わず私は二杯目を注ぎに行くこととなった。

 それにしても、と。階段を降りながらふと考えた。
 リヴァイ兵長は、細すぎると思う。
 身長もあいまってのことだとは分かっているんだけど、女みたいな細い足と腕_あんな体躯で、どうやって立体機動を操っているんだろう。良いものが食べられないのは皆同じだけれど、エルヴィン団長や他の団員に比べてリヴァイ兵長は細すぎる。



 私の腕_もしかして兵長よりも太…いやいやいや_をじっと見ながら、湯気の立つココアをお盆に乗せて、再び兵長の部屋をノックする。返事はなかった。しばらく続けても返事はない。

 なにかあった? _まさか、外敵が___

「っ、兵長!?」


 盆を床に置き、太腿に忍ばせたナイフを構えて部屋へ飛び込むと、そこにはなんの変哲もない__平常通りだった。私の勘違いだったのだ。ナイフを構えているのがなんだか恥ずかしくて、ホルダーへと戻した。けれど兵長が、返事をしないから。自分の許可なしに部屋に入られることを嫌う兵長が、ノックを無視するなんて、そんなのあるわけないじゃないか。イコール非常事態、と認識したのは間違っていないはず。
 当の本人を見ると、リヴァイ兵長が__机に突っ伏して寝ている。微かにゆっくりとした寝息も聞こえる。本当に疲れていたんだ、こんな短時間の間に寝てしまうなんて兵長らしからぬ行動だ。

 一旦机の上に盆を置き、滅多に見られないリヴァイ兵長の寝顔を見つめる。目の下に隈が出来ている。肌は青白い。だから余計に目立つ。
 手が伸びる。


 さらり、と。
 耳に掛かる髪の毛を退かす。

「リヴァイ兵長、」

 貴方が最前線で闘っているところを見ると、尊敬を抱くと同時に私は不安になります。貴方に死なれたら、と思うと。貴方の死に際を見るときはもう、私は死んでいるはずですけれど。けれどずっと飛び回っている貴方を見ると怖いのです。自分の身体を一番傷つけているのは誰ですか。

「すきです、」


 ああ言ってしまった。最早兵長の寝息は、聞こえないというのに。



( 20110503 )
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